ゴールデンウィークを前に高止まりするレギュラーガソリンの価格。じつに5年半ぶりの水準で164.2円という価格まで高騰すると、同じ給油量で少しでも長く走れる低燃費のエコカーが注目を浴びるのも頷ける。

 いま、自動車メーカー各社が鎬を削る「燃費競争」で優位に立っているのは車体の軽い小型のハイブリッド車(HV)。1リットルあたり37.0kmのトヨタ「アクア」と、同36.4kmのホンダ「フィット」が抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り返している。

 軽自動車「アルトエコ」で35km/リットルの燃費を実現したスズキが小型車用に簡易型のハイブリッド技術を開発しているとのニュースも飛び込み、HVの覇権争いは混沌としてきたかに見える。業界関係者も「どのメーカーが先に40km台を達成するかのレベルに入ってきた」と話す。

 周知の通り、HVはエンジンと電気モーターの両方を動力源に持ち、クルマが無駄に捨てていたエネルギーを再利用するシステムによって燃費を向上させている。

 だが、ここにきて非ハイブリッド、すなわち普通のガソリン車の燃費が飛躍的によくなっている。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が解説する。

「先日トヨタが発売した新型の『パッソ』(ガソリン車)は、燃料を燃やして発生する熱をどれだけ運動エネルギーに変換できるかを示す“熱効率”の割合を38%まで高めました。これはガソリン車では世界最高レベルで、1世代前の『プリウス』(HV車)のエンジンよりもピーク時の熱効率がいいのです」

 そのおかげで燃費も27.6km/リットルと従来モデルより3割向上。HVと軽自動車を除くガソリン車で国内最高に躍り出た。

 それにしても、世界に冠たるハイブリッド技術を起爆剤にブランド価値を高めてきたトヨタが、自らガソリン車の燃費向上をアピールしたことで業界全体に「ある変化」が生まれてくるだろうと井元氏は予測する。

「エンジン技術の進化でHVとガソリン車の燃費差が年々縮まる中、もはやHV=低燃費だけで売れる時代ではなりつつあります。

 もちろん、メーカーがモノづくりの競争力を失わないために今後も燃費競争は続いていくと思いますが、エンジンだけでなく、デザインや乗り心地といった総合的な付加価値を高めてライバル車に差をつけようという意識に変わっていくと思います」

 では、自動車ユーザーの燃費に対する購買意欲も薄らいでいくのだろうか。4WDの小型車に乗る30代の男性からはこんな声も聞かれた。

「東京から往復で600kmの長距離ドライブ、しかも起伏の激しい山道を通ってもリッター20kmは平気で走ります。例えば同じクラスのHVに乗り換えて25kmになったとしても、1か月に1000km乗ってガソリン代の差はせいぜい1500円。その程度ならば、少しくらい燃費が悪くても自分が乗っていて楽しいクルマを選びますね」

 いまや、乗り方によってカタログ燃費と実燃費に大きな差が出てくるのはユーザー側も十分に認識しているはず。ならば、そろそろメーカー間の過度な燃費競争に踊らされない賢いクルマ選びをしたいところだ。