韓国南西部の珍島(チンド)沖で発生した旅客船沈没事故で、修学旅行中の高校生ら約340人が乗っていたことを受け、団体で行動する「修学旅行」を廃止すべきとの声が上がっている。インターネット上では、小中高校による修学旅行の廃止を求める署名運動が行われている。複数の韓国メディアが報じた。

 沈没事故は18日正午の時点で、死者28人。このうち安山檀園高校の学生は14人に上る。行方不明は268人で、安山檀園高校の学生は236人と8割以上を占める。朴槿恵大統領は事故直後の中央災難安全対策本部で「修学旅行に行った学生がこのような不幸な事故に遭ったことを痛ましく思う」と話した。

 韓国のインターネット上では、修学旅行の危険性を訴え、廃止を求める声が上がっている。16日にはコミュニティーサイトに「小中高校の修学旅行、修練会(研修会や移動教室など)をなくしてください!!!」と題した署名運動が登場。

 署名を提案したネットユーザーは、修学旅行先での事故や暴力沙汰などの問題が増えていると指摘し、「小中高校の修学旅行に法的な義務はない」として修学旅行の撤廃を訴えた。署名数は18日正午の時点で2万5000人に達する。

 このほかにも安山檀園高校を管轄する京畿道教育庁や、ソウル市教育長、教育省などのホームページには、修学旅行の廃止を求める書き込みが殺到した。

 韓国メディアによると、韓国の修学旅行は日本統治時代に日本から持ち込まれた旅行文化だという。

 当時、旅行は身近なものではなく、学生時代に格安で行ける修学旅行は意味のあるものだった。しかし最近では家族旅行の文化が発達し、集団主義より個人主義の方が望ましいとの考えから不要論が広がり、「日本帝国主義教育の残滓」との批判もあった。

 インターネットの掲示板には「どれだけ多くの子どもが亡くなれば不必要な現場体験や修学旅行を廃止するのだろうか」、「不安といらだちが募る修学旅行に私の子どもを送りたくない」などの意見が書き込まれた。

 このような反応を受けて、一部の自治体は修学旅行を中止・再検討することを決めた。京畿道教育庁は17日、1学期に予定していた現場体験学習を全面中止とした。ソウル市教育長も、市内のすべての小中高校に対して、現在計画中の修学旅行や修練会で安全性に懸念がある場合は直ちに中止するよう指示した。しかし学生や保護者の不安は大きくなるものの、旅行会社への巨額のキャンセル料が発生することから修学旅行中止を決定できない学校もあるという。(編集担当:新川悠)