兵庫県の花屋敷ゴルフ倶楽部で開催されたスタジオアリス女子オープン(4月11日〜13日)。今季「大物ルーキー」として注目されていた藤田光里(19歳)が、ついに躍動した。2日目を終えた時点でトップと4打差の3位。プロになって初めて、最終日最終組でプレイした。

 結局、藤田はボギーが先行して後退。同組のリ・エスド(9アンダーで優勝)とO・サタヤ(8アンダーで2位)との熾烈な優勝争いには加われなかったものの、最後まで集中して自分のゴルフに徹し、通算4アンダー5位タイでフィニッシュ。プロ入りして最高の成績を残した。

 そのためか、他人の優勝の瞬間を間近で見ながらも、ホールアウト後の藤田の表情は晴れ晴れとしていた。

「(最終組でも)緊張はしなかったです。(初優勝のチャンスを逃しても)今はすごくすっきりしています。他の選手の優勝でも、その瞬間を同組で見られてよかったし、うれしかった。自分も優勝争いに加わっていたら、悔しかったかもしれませんが、そういう状況ではなかったので......。とにかく、優勝を争う選手たちと同じ組で回れて、とても楽しかったです」

 そう語って、屈託のない笑顔を見せた藤田。その面持ちは、今季開幕戦の頃とは明らかに違っていた――。

 アマチュア時代、北海道女子アマチュアゴルフ選手権を5連覇した経歴を持つ藤田は、昨年のファイナルQT(クォリファイングトーナメント)を1位通過。その後、LPGA新人戦の加賀電子カップ(2013年12月12日〜13日/千葉県)で優勝すると、年明けにはレオパレス21と所属契約と交わし、キャロウェイとも用具契約を結んだ。プロの世界でまだ結果を残していない新人としては、破格の待遇だった。

 そんな好素材をメディアが放っておくはずがない。愛らしい容姿も相まって、藤田の周りには開幕前から多くの記者やカメラマンが群がった。「大物ルーキー」と騒がれて、彼女の一挙一動に熱い視線が注がれた。

 昨年までアマチュアの世界にいた藤田は、そうした状況にさすがに戸惑った。さらに「さまざまなイベントや会見に出席したり、スポンサーさんへの挨拶に回ったりして、(自分に)期待がかかっていることがよくわかりました」と、藤田は周囲の期待にも少なからずプレッシャーを感じていたという。

 その結果、藤田の表情は徐々に硬くなっていった。迎えた開幕戦では、彼女の顔からは笑顔が消え、まったく余裕が感じられなかった。ただそれは、メディアの執拗な取材や、周囲からの大きな期待のせいだけではなかった。藤田は「(プロの)トーナメントの独特の雰囲気に馴染めなかった」というのだ。

「人間関係がうまくいかなかったというか、周囲の選手や関係者がすごくピリピリしているように見えて、怖かったんです。堂々とプレイしているように見えて、実際は気持ちもプレイも縮こまっていました。また、『結果を出さなければ......』と焦ったり、『また来週、予選落ちしたらどうしよう......』とか考えたり、かなりネガティブな思考になっていました」

「大物ルーキー」と騒がれながら、落ちつきのない表情の原因は、ここにあった。プロの世界における人との接し方に悩み、ツアーの雰囲気に馴染めなかったのだ。結果、開幕戦から3試合連続して予選落ちを喫した。

 しかし、試合を重ねるごとに、そうした悩みはすぐに解消されていったという。

「ツアーに慣れない当初は、キャディーをしてくれている妹と一緒にいることが多く、クラブハウスでもひとりぼっちのときがありました(笑)。でも今は、周りの選手やキャディーさんたちも話しかけてくれるようになって、すごく気持ちが楽になりました」

 そもそも、藤田の調子自体は悪くなかった。ゆえに、精神面が安定したことで、結果もついてくるようになった。4戦目のアクサレディス(3月28日〜30日/宮崎県)で初めて予選突破を果たすと(45位タイ)、続くヤマハレディース(4月3日〜6日/静岡県)では17位タイ。そして、スタジオアリス女子オープンでは、5位タイと躍進した。

「今回のスタジオアリスでは3日間、最後まで諦めることなく、粘り強く戦えました。大会トータルで、アンダーパーで回れたことは大きな成果です」

 本来の柔和な笑顔が戻った藤田。怖気(おじけ)づいていた表情は影を潜め、逆に自信が満ち溢れていた。

「私はもともと、人に見られたり、注目されたりするのは、嫌いじゃないんです。中学のときは、演劇の主人公に立候補したり、リレーの選手を任されたりして、常に目立つところにいましたから(笑)」

 そう言って、自身を取り囲む多くの記者たちを笑わせた藤田。元来目立ちたがり屋だけに、期待されることも決して苦ではないという。"プロの水"にも慣れた今、「大物ルーキー」がいよいよ爆発のときを迎えようとしている。

野崎 晃●文 text by Nozaki Akira