新興国通貨が急落し、波乱の幕開けとなった2014年の為替相場だが、「米国経済の回復基調」に変化なし。一方、ユーロと豪ドルのトレンドに異変が!?

新興国通貨急落や米国経済停滞は一時的なもの

 今年の為替市場は、1月末にアルゼンチンペソやトルコリラ、南アフリカランドなど新興国通貨が急落し、波乱の幕開けとなりました。

 その背景には、米国FRB(連邦準備制度理事会)が量的金融緩和を100億ドルずつ縮小させる「テーパリング」を続け、ドル資金が新興国から大挙して流出してしまうという懸念がありました。

 しかし、資源輸入国で経常赤字が続くトルコのリラも暴落モードから下げ止まりに転じたように見え、当然のことながら、資源輸出国のブラジルのレアルなどは比較的落ち着いており、今後は売られすぎた分が買い戻される流れに移るでしょう。

 2014年の為替市場最大のテーマが「米国の景気回復」であることに変わりはありません。

 昨年来の大寒波で年初の米国の経済指標は軒並み悪化しましたが、これはあくまで一時的なものと思われます。

 予想を下回った雇用統計に関しても、失業率低下の負の要因といわれた労働参加率が月の62・8%から1月は63%に改善。悪天候なら悪天候なりに除雪機や暖房器具の需要が高まることから、1~3月期のGDP(国内総生産)が年率換算で3%強の成長を遂げる可能性もあります。

 そう考えると、現状1ユーロ=1・3ドル台後半で推移しているユーロ/米ドルは買われすぎです。

 最近のユーロが堅調なのは実体経済が以前と比べて多少よくなったように "見える" から。これまでの欧州危機でユーロの保有量を100から0(ゼロ)にした投資家が50程度までユーロを買い戻しているだけにすぎません。依然として、南欧の財政赤字問題という火種はくすぶり続けており、景気循環という点では世界の最後尾を走っているのがユーロ圏です。

 やはり、米国経済の回復なくして、ユーロ圏の立ち直りはありません。それゆえ、今後はユーロの買い戻しトレンドが収束し、1ユーロ=1・25ドル台を目指したユーロ安・米ドル高が進みそうです。

中国発の金融危機は杞憂。米国経済とともに新成長モードへ

 米国経済が回復すれば中国をはじめとした新興国経済も併走して持ち直すという意味では、米ドルに対する資源国通貨である豪ドルの下降トレンドもそろそろ最終局面を迎えたといえるでしょう。

 市場では、中国国内で乱発された理財商品がデフォルト(債務不履行)して、金融危機が起こるという不安をあおる向きもあるようですが、中国政府はそれほど無策ではありません。むしろ、緻密な計算と経済的な活力で新たな成長モードに入る可能性もあるでしょう。

 そもそも、イエレン新議長率いるFRBがテーパリングを "粛々と" 行なえるのは、米国経済が確実に回復途上にあるからこそ。市場がテーパリングのポジティブな側面に注目して、「金融緩和を縮小しても米国の株価が下がらない」という状況になれば、米ドル高トレンドも自然と本格化するはずです。

 そうなると、超低金利が続くことが予想される日本円はキャリートレードの資金源として売られ、1ドル=105円を突破して将来的には110〜115円を目指す展開も見込めます。

 確かに、これまで市場に先んじて金融緩和策などを打ってきた黒田日銀や安倍政権の対応が、4月に迫った消費税増税を前に後手後手に回っているのは心配です。

 しかし、ここでも「米国景気回復」という大前提に立てば、このところ円ショート(売り)のポジションを減らした外国人投資家が再び円売り攻勢を仕掛けてくる日も近いといえるでしょう。

【今月のカリスマ軍師】
上田眞理人(MARITO UEDA)
FXプライム 専務取締役

東京銀行、モルガン銀行、ドレスナー銀行などで為替ディーラーや外国為替部長を歴任後、現職。



この記事は「WEBネットマネー2014年5月号」に掲載されたものです。