目が痛くなるほど速いスピードで点滅して動くモニターに、東京・兜町にある大手証券会社のディーリングルームの静寂が破られた。

「おい! ぶっ飛んでるぞ!」

 3月13日10時18分48秒。朝から横ばいが続いていたチャートが、わずか十数秒の間にみるみる急降下していく。

 あまり一般には知られていないが、この日「国債先物」という金融商品が突然、大暴落した。

 銀行や証券会社の自己売買部門では一般的に取引されているもので、日経平均にたとえると1000円以上も急落したような凄まじい値動きだった。国債の額面にして2000億円以上とも見られる売りが浴びせられたのだ。

 中堅証券会社の債券ディーラーが明かす。

「その日に発表された日銀の買いオペが期待より少なかったため売りにつながったとされていますが、それだけでは説明がつかない。要は、機関投資家の多くに『いつ売りを仕掛けようか』という雰囲気が広がっていたということです。だから売りが売りを呼んだ。下値で買い支えがあったからその日は持ちこたえましたが、それがなかったらどこまで下がっていたか……」

 債券市場だけではない。株式市場も危うい状況だ。

 安倍政権発足直前の2012年11月に9000円前後だった日経平均株価は、2013年末に1万6000円を超えた。1年あまりで85%も上昇したが、その後は上昇の勢いが消えた。

 経済学者の田代秀敏氏は「現在はかつてのバブル崩壊時に似ている」と警戒する。

「1989年末に記録した最高値と、2013年末の株価をそれぞれ100とし、その前後の値動きを比較すると過去3年の上昇率がほぼ同じことがわかる。20年前のバブル崩壊では3年かけ最高値の4割以下まで下落した。今回の株高が当時より急激だったことを考えると、下落はさらに速いかもしれない」

※SAPIO2014年5月号