「日本経済は20数年振りにデフレから脱却し、 インフレの入り口に差し掛かった可能性が高い」と語る松本氏。 今後の資産運用は預貯金一辺倒では成功しなくなるとも指摘する。NISAがスタートし、 貯蓄から投資への流れが生まれつつある中、松本氏が見通す 日本経済の将来像と、あるべき資産運用の姿とは?

緩やかなインフレへ。 放っておくと、お金の 価値が目減りする

 毎月、様々な地域で会場型セミナーを開催していますが、とりわけ米国株のセミナーはいつも満員。私が壇上から見た限りでは、お客様は大手メーカーか商社・金融の50代の経理部長、といった日本経済の主役の方々ばかりという印象。質問の水準が非常に高いし、何より皆さん顔が明るい。恐らくここ1年半、日本株で利益を上げ、次の有力な運用先として米国株を検討されているのだと思います。

 その米国株に触れる前に、今後の資産形成をどう考えるべきかを見ていきましょう。

 大きな焦点は、日本はデフレから脱したのかどうか。私は、バブル崩壊後に陥ったデフレから約25年ぶりに、緩やかなインフレに転換した可能性が高いと考えています。3月に発表される全国地価の公示価格が全国的にプラスに転じたとしたら、デフレ脱却の強烈なシグナルとなります。ここ1年半で高騰した日本株の市場規模約500兆円と比べても、不動産市場の規模は2500兆〜3000兆円。地価がプラスに転じる心理的な影響力は、株価以上に絶大です。個人消費や企業の設備投資が促され、世の中の雰囲気は一気によくなるでしょう。

 デフレ脱却がはっきりしたら、お金を持っている人はあれこれ考え始めます。放っておくとお金の価値は目減りしますから、預貯金は損。かといって、不動産は売買のロットが大きく手を出しづらい。自然とNISA(少額投資非課税制度)、投信、REIT(不動産投資信託)に目が向くでしょう。NISAは今のところ無税を購入動機としたお客様が大半ですが、大きな資産を持っていない人でも少額から利用できるNISAは、今後「アベノミクスの受け皿」として認識されるようになると考えています。

 さて、インフレ期に入るということは、資産を増やす選択肢が拡がるということですが、基本的にはテーマで細かく売り買いするより、あまり頻繁に銘柄をいじることなく、長い波動で考える長期分散投資がよいと思います。

 私は特に米国株をお勧めしています。米国はやはり凄い国。世界最大の経済大国であるにも関わらず、今も成長を継続中で、世界中のどの国が成長しても儲かる仕組みができている"世界の元締め"のような存在です。2008年のリーマン・ショックを乗り越え、ダウ平均で史上最高値を付けた米国株市場は世界最強といっていいでしょう。

 依然として人口が右肩上がりで増えているのも大きい。移民による増加を差し引いても増え続けています。米国は経済面で個人消費が大きな割合を占めるため、人口が多いことはそれだけでもメリットです。




松本 大(まつもと・おおき)
マネックス証券代表取締役社長CEO

1963年、埼玉県生まれ。
1987年東京大学法学部卒業。
ゴールドマン・サックス証券において、当時、最年少ゼネラル・パートナーとなったことは高名。1999年4月、ソニーと共同でマネックス証券を設立。
現在、事業持株会社であり、個人向けを中心とするオンライン証券子会社を日本・米国・香港に有するグローバルなオンライン金融グループであるマネックスグループ(株)およびマネックス証券(株)両者のCEOを務める。マネックス証券は、2012年11月にグループ会社・米国Trade Stationの取引システムを導入し、米国株取引サービスを全面的に刷新。昨年 12 月に米国株取引の特定口座対応を開始。

この記事は「WEBネットマネー2014年5月号」に掲載されたものです。