ウクライナ南部のクリミア半島をロシアが併合したことが重大な国際問題になっています。

 ロシアのプーチン大統領は、住民投票によって圧倒的多数がロシアへの編入を支持したのだから「完全に民主的で合法的だ」といいます。しかし国の憲法や法律を無視して各地域が勝手に住民投票を行ない、独立や他国への編入を決めるのでは、近代を支える主権国家の仕組みの全否定になってしまいます。欧米諸国が「併合はぜったいに受け入れられない」とするのは当然です。

 しかしその一方でクリミア半島が複雑な歴史を抱えていて、「ロシアの侵略」と単純に決めつけられないのも確かです。ヨーロッパでも危機感が強いのはポーランドなど東欧の国で、ロシアとの経済的な関係が強いドイツでは「旧ソ連邦の特殊な出来事」として制裁に消極的な意見が多数派のようです。

 クリミア半島をめぐる争いは、政治が権力闘争だということをよく示しています。権力者が政治的決断をするときに考えるのは、次の3つのことです。

(1)国益を最大化する

(2)自分の権力基盤を強化する

(3)政敵の権力基盤を弱体化させる

 政治家はこれらの複雑な組み合わせの中から、功利主義的に最大の利益を獲得する選択を行ないます。このときもっとも重要なのは自分の権力基盤で、国益はしばしば二の次になります。外交上の判断がどれほど正しくても、権力を失ってしまえば意味がないからです。

 そう考えると、国民がクリミア併合に熱狂する中で、プーチンにはそれ以外の選択肢はありませんでした。欧米の首脳もそれはわかっていますが、併合を容認することはできず、世論を見ながら着地点を探ろうとしているのでしょう。

 日本にとってクリミア半島は安全保障になんの関係もなく、対岸の火事でしかありません。またロシアとの間には北方領土問題を抱え、平和条約も締結していません。欧米諸国とは条件が異なる以上、追及する利益にも違いが出るのは当然でしょう。

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