アジアで6000万台の「ファブレット」市場を狙う!SonyのミドルレンジLサイズスマホ「Xperia T2 Ultra」はXperia Z2よりも注目機種【山根康宏の“世界のモバイル”】

アジアで販売が始まったSonyの新型ファブレット、Xperia T2 Ultra

スペイン・バルセロナにて今年2月に開催された「Mobile World Congress 2014(MWC 2014)」でソニー(ソニーモバイルモバイルコミュニケーションズ)が発表したフラッグシップスマートフォン「Xperia Z2」の販売が各国で始まっている。3月末に台湾で発売されたのに続き、4月にはアジア各国でも販売が始まる予定だ。だが、このXperia Z2以上に大きな話題を集めているのが同じく4月から販売が始まった6インチモデルの「Xperia T2 Ultra」である。

アジア市場ではここ1〜2年、大画面ディスプレイを搭載したいわゆる「ファブレット」の人気が高く、5.5インチや6インチといった大型のディスプレイを搭載したファブレットが次々に販売されている。しかも大画面を好むのは男性だけではなく女性にも多く、皮製のフリップカバーをつけ手帳のように持ち運ぶスタイルも一般的になっている。

例えば日本でも人気の高いスマホ向けコミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」を使って友だち同士で写真やビデオの交換をするときなど、より大きい画面のファブレットはお互いのコミュニケーションを潤滑にそして楽しいものにしてくれる。仲間内で写真を見せ合うときでもファブレットなら多くの人数で同時に画面を見ることができるだろう。

このファブレット市場をけん引するのはSamsungで、ファブレットの代名詞とも言える「GALAXY Noteシリーズ」も現行機種は「GALAXY Note 3」と「GALAXY Note 3 Neo」という2機種を用意。さらには低価格な「GALAXY Megaシリーズ」も揃えておりラインナップは充実している。これに対抗し各社からもファブレットが登場しているが、Sony唯一のファブレットである「Xperia Z Ultra」はハイエンド製品ということもあり価格が高い。

高価格帯から低価格品まで数種類を揃えているSamsungは先進国から新興国まで広くファブレットの販売数を伸ばしているのに対し、高価格モデルのみのソニーは苦戦を強いられているのが実情だろう。特にアジアではスペックそのものではなく「とにかく大画面」を求める消費者が多い。そのような消費者のニーズに応えて登場したのがXperia T2 Ultraなのである。

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従来品の半額ということもあり中国ではさっそくXperia T2 Ultraの人気が高まっている


Xperia T2 Ultraは1.4GHzクアッドコアCPUを搭載し、画面解像度はHD(720×1280ピクセル)と決してハイエンド製品ではない。しかしながら、画面サイズは6インチと大きく、カメラも1300万画素と高解像度のものを搭載している。価格も中国では2,399元(3G版)と約4万円であり、他社のミッドレンジのファブレットと十分競争できるレベルだ。ちなみにXperia Z Ultra(3G版)は4,499元と約7万5千円なのでほぼ半額の価格となる。

調査会社Juniper Researchの報告によると、世界のファブレット市場は2018年には販売数が1億2000万台に達するだろうとのこと。同社はファブレットを5.6インチから6.9インチと定義しているが、その前後コンマ数インチのモデルも含めればその数はさらに増えるだろう。ちなみに2012年のファブレット市場は全世界で2000万台であり、向う6年間で6倍に成長すると見込まれている。特に伸びが期待されるのがアジア市場で、ファブレット全体数の半数、約6000万台がアジアで販売されると予想されている。

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アジアでのファブレット需要は急速に伸びている。フィリピンでも地元メーカーがファブレットをリリース


もちろん、2.3GHzクアッドコアCPUや2070万画素の高画質カメラなど、フルスペックを搭載した新フラッグシップモデルのXperia Z2の消費者からの注目度も高い。だが、現実としてアジア市場で確実に高まっているファブレット需要を取り込むためには、Xperia Z Ultraだけでは難しい。Xperia T2 Ultraはこれからさらに市場が拡大するアジアのファブレット市場において戦略的な位置づけとなる製品であり、国によってはXperia Z2よりもXperia T2 Ultraのほうが販売台数を伸ばすかもしれない。2014年のソニーはフラッグシップを示す“Z”シリーズだけではなく、“Ultra”と名の付いたファブレットシリーズにも注目したい。

記事執筆:山根康宏


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