昨季、横峯さくらとの熾烈な争いを制して、初の賞金女王に輝いた森田理香子。「女王」の称号を手にした彼女は、今季もシーズン開幕と同時に躍動した。開幕戦のダイキンオーキッドレディス(3月7日〜9日/沖縄県)でいきなり優勝争いを演じる(2位タイ)と、3戦目のTポイントレディス(3月21日〜23日/佐賀県)では、早くも今季初優勝を飾った。

 森田にとって今季は、「女王」という名のプレッシャーとの戦いになると思われた。なにしろ、昨季終盤、森田はかなりナーバスになっていたからだ。6月までに3勝して賞金ランクトップを独走していながら、横峯に急追され、一度はその座を譲ってしまった。精神的な弱さを露呈し、一時、プレイでは消極的な姿勢が目立ち、メディア対応においても、記者の問いかけに苛立ちを隠せないでいる場面があった。

 昨シーズン終了後、そのときの心境を森田はこう語っている。

「昨季は、記者の方々から繰り返し聞かれる『賞金女王争い』についての質問がすごく嫌でした。『なんで、毎日聞いてくるの』って(笑)。正直、放っておいてほしかったです。(精神的に)すごく追い込まれましたし......」

 しかし今季、彼女からはそんな素振りは一切見られない。逆に堂々として、これまでの森田とは明らかに違う雰囲気を漂わせている。

「すごく周囲から『変わったね』って言われるんです。落ち着いているし、『女王の貫録が出てきたね』って。だからといって、実際に何かを変えたとか、そういうことは特にないんです。ただ、なんか違う目線で、自分のことを見られている自分がいるんです。例えばプレイ中、ここでスコアが出なかったとしても、『別に命をとられるわけでもないんだから』と冷静に見ている自分がいる(笑)。自分で自分に"余裕"を与えている感じがありますね」

「女王」という称号は、森田にプレッシャーではなく、精神的な"余裕"や"ゆとり"をもたらしたようだ。それはプレイに限らず、メディアへの対応や、そこで発する言葉の端々からも感じられる。

 注目度が上がった森田は今季、その一挙一動に視線が注がれ、成績の善し悪しに関係なく、コメントを求められる。それでも、今季の森田は嫌な顔ひとつせず、メディアに対応するようになった。京都弁を織り交ぜて、時折笑顔を浮べながら、あらゆる質問に真摯に答えている。

「笑顔が出るのは、たぶん、焦ってないからなんでしょうね。『焦らなくても、楽しくやればいいやん!』って、軽い気持ちでいられるというか。これまでは、バーディーを獲らなきゃとか、優勝しなきゃとか、そういう気持ちが大きかったんです。その分、結果を求めて(気持ちが)焦っていたんでしょうね。でも今は、肩に力が入った感じではないんです。これは、今までに感じたことのない感覚ですね」

「女王」になったことで、森田は"自然体"でいられるようになった。その姿からかもし出されるものは、まさしく「女王の風格」だった。

 そんな森田の今季の目標は、賞金ランク5位以内。師匠の岡本綾子プロから、「今年、賞金ランク5位以内に入れば(プロとして)本物」と言われたからだ。

「たぶん岡本さんは、今季も私にかかるプレッシャーは相当あると思ってくれたんでしょう。だから(プレッシャーをかけないように)優しく『トップ5』と言ってくれたんだろうって、勝手に思っています(笑)。最低限、そこはクリアしたいですね」

 しかし、真の目標はもちろん「賞金女王。それが実現できれば、それに越したことはありません」と森田。だからこそ、国内ツアーを重視する。

 米女子ツアーではまもなく、今季メジャー第1弾のクラフトナビスコ選手権が開幕(現地4月3日〜6日/カリフォルニア州)する。昨季賞金女王の森田は出場資格を持つが、あえて出場を辞退。国内ツアーのヤマハレディース葛城(4月3日〜6日/静岡県)に挑む。

「(日本ツアーで)誰も寄せつけない、強い選手になれればいいな、と思っています。(国内ツアー通算50勝の)不動裕理さんのように、『また優勝したの!?』って思われるくらいの存在になりたい」

「女王」という称号は、間違いなく森田を変えた。その"凄み"は、試合を重ねるごとに増している。今の森田ならば、再び賞金女王となる可能性はかなり高い。不動裕理という偉大なる存在に近づくことも、決して夢ではないだろう。

野崎 晃●文 text by Nozaki Akira