大きな調整局面こそ、長期投資家の出番だ。″買いたい弱気″にひるまず、買い増していこう!
1月下旬に日本や米国の株式市場は大きく売られた。アルゼンチンなど新興国の通貨安で、金融マーケットに動揺が走った。金融マーケットは情勢の変化には、敏感で悪材料に対してはまず売りで反応する。売り先行がさらなる売りを呼び、マーケットは大きく下げることもしばしば。これが、いわゆる暴落相場である。だが、長期投資家にとって暴落相場こそ、絶好の買い仕込み局面だ。

長期投資家は調整局面を「ちょうどいいお湿りだ」ぐらいにしか見ていない

 日本株市場は新年に入って、ややもたつき気味の相場展開となった。
 多くの投資家から見れば「冗談ではない。日経平均株価は、年末から1000円以上も下がっているではないか。もたつきどころではない」と、噛みつかれるかもしれない。

 ところが、われわれ長期投資家は、ややもたつき気味と軽く流してしまう。この違い、どこから出てくると思うかな?それは、投資目線の違いからである。

 一般の投資家は株式市場にどっぷりつかって、その中で相場動向を読もうとする。だから、昨年末のような力強い上昇相場が続くと、買い意欲を高めながら相場の先行きに明るい見通しを語ることになる。にもかかわらず、新年に入って調整局面の様相が強まってくるや、相場の先行きに不安を感じ始める。もうとてもではないが、安値を買おうなんて気にはなれない。

 一方、長期投資家はこの調整局面を「ちょうどいいお湿りだ」ぐらいにしか見ない。個別銘柄で大きく下げるものがあれば、すかさず買いにいく。少なくとも、こんなところで売って現金比率を高めるなんて考えは出てこない。

 まあ、相場のことだから、この先どうなるかは神のみぞ知るところ。一般投資家の不安が的中するか、われわれの押し目買いが吉と出るかは、後になってみなければわからない。

 ひとつはっきりしているのは、1年2ヶ月前までとは違うということだ。

 ずっと続いた長期低迷相場では、弱気あるいは慎重な姿勢を保った投資家に分があった。逆に、長期投資家は買っても買っても売り崩されるの連続だった。

 それが2012年11月半ば以降、状況は一変した。われわれのように買っていた投資家と、相場を語るだけで何もしなかった人とでは決定的に差がついた。この違いは、ここから先の相場の読みにも反映されてくるだろう。

上昇相場が続くと困る出遅れ投資家たちは、倏磴い燭ぜ綉〞を発信

 長期投資家は「いいぞ、どんどん上がっていってくれ。押し目あらば買うぞ」で、スッキリしている。ところが、買い遅れた投資家はこのまま上昇相場が続いていくと困る。むしろ下がってくれたほうがいい。それで出遅れ投資家は、口をそろえて倏磴い燭ぜ綉〞を発信することになるわけだ。これはいつの上昇相場でも起こる現象である。

 世の中はおもしろいもので、相場にしても景気にしても慎重論をぶったほうが、より知的で理性的であると受け取られる。とりわけ、エコノミストや学者の間では、景気動向の見通しで弱気を語るケースが多い。

 弱気を言って裏目になったとしても、経済全体は景気上昇を歓迎するから文句は出ない。しかし、強気を言って読みがはずれたら総スカンを食う。経済全体がマイナスに向かっているから、すでに損を被っている人からの批判が集中しかねない。

 ここに来ての調整でも、予想がはずれたときの安全弁を講じようとして慎重論に傾きがちな相場見通しに加えて、先にも述べた倏磴い燭ぜ綉〞というのが乗っかっている。その相乗効果で、単なる上昇相場の調整局面だったものが意外と大きな売りを誘うこともしばしばだ。

 むろん、長期投資家は「下げたらいくらでも買うぞ」の姿勢を崩ささない。狙っている企業の株が大きく押してくれたら、大歓迎の買いを入れをるだけのこと。

 昨年5月日から6月日まで、日経平均株価は%余り下げた。急落のトラウマもあってか、戻り高値を更新したのは7カ月後の月も終わりのころだった。

 結果的には大きな調整局面となり、多くの投資家が慌てて持ち株を売ったり、その後の低迷相場を買いそびれてしまった。

 言ってみれば、ふるいにかけられたわけだが、この現象は今年から先、もっと激しくなっていくだろう。

22年間も低迷相場が続き、本格的な上昇相場を知らない投資家が大半

 理由は簡単だ。日本株市場では年間も低迷相場が続いたこともあり、本格的な上昇相場を知らない投資家が大半だからだ。しばらく株価上昇が続くと、すぐ上値警戒感で売りたくなる。そして、ちょっと調整局面となるや、上昇相場は終わったと判断したがる。これは長期の上昇相場を味わったことがない投資家に特有の現象なのである。

 上昇相場がより腰の強いものになっていくためには、チョロチョロと売りが出てくることは大歓迎だ。ドドッと吹き上がると一過性の上昇相場で終わってしまうが、上がっては売られ、また上がっては売られの繰り返しは最高の展開となっていく。

 長期投資家は誰も想像つかないほどの巨大な上昇相場を想定している。だから、日本株に関して、長期の買い持ちスタンスを崩さず、押し目あらば断固たる買い増しでいこう。

澤上篤人(ATSUTO SAWAKAMI)
さわかみ投信取締役会長

1947年、愛知県名古屋市生まれ。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。『5年後の日本をいま買う長期投資』(小社刊)、『今から長期投資を始めて2億円にしよう!』(主婦の友社)など著書多数。



この記事は「WEBネットマネー2014年4月号」に掲載されたものです。