NY発 ファイナンシャルINSIDE_4月号
米国ではヘッジファンドの運用者が日本のアベノミクスにかなり興味を示している様子がうかがえる。ヘッジファンドというと発特殊な印象を持たれがちだが、彼らは割安であれば買い、割高であれば売るだけの存在。それ以上の過大評価をすべきではない。

 昨年から、ニューヨークの日米交流団体「ジャパン・ソサエティー」が主催する講演会に地元金融関係者の姿が目立つ。関心は日本文化というよりも経済。安倍政権が打ち出したアベノミクスの成否に関心があるのだ。

 こうした金融関係者はネクタイを締めていないなど、どちらかというと若い世代。話しかけてみると、ヘッジファンド関係者である場合が多い。日本経済の成長、インフレ率、財政内容といったマクロ動向を予想して、円通貨や日本国債の割安・割高を計算して売買する、通称「グローバルマクロ」と呼ばれる連中だ。

 ヘッジファンドの購買者は投資経験歴が長く、金融資産が一定額以上ある富裕層に限られているので、ヘッジファンドという名前だけが先行して特殊な印象を持たれることが多い。だが、その実体はわかってしまえば簡単だ。債券、株式、商品、金融派生商品といった伝統的な運用対象から、不動産、映画の興行権まで、値付けできる商品なら何でも売買する、いわば狹蟷颪了┣濂〞なのである。

 情報会社・ブルームバーグの統計によると、ヘッジファンドによる昨年の運用利回りは7・4%で、代表的な株式指数のS&P500種をポイントも下回った。その中でS&P500種を上回ったのは全体の5%程度とされる。運用実績はピンキリなのだが、他の金融商品との相関性が低い場合があるので、世界中の機関投資家がヘッジファンドをポートフォリオに組み入れている。その数は2000社に及び、運用残高も2兆ドル(約200兆円)を超えた。世界中の公的・企業年金から大学基金まで、ヘッジファンドに投資しており、日本でも公的年金の運用拡大が政府で検討されている。

 あまり知られていないが、ヘッジファンドの始祖はジャーナリストである。米国経済誌のライターだった米国人、アルフレッド・ジョーンズが株式市場の非合理的な値動きに気づき、1950年前後に運用を開始した。株式から始まったヘッジファンドだが、今や投資手法は以上ある。世界最大のヘッジファンド、著名な投資家ジョージ・ソロス氏などの資産を運用するソロス・ファンド・マネジメントが得意とするのがグローバルマクロだ。

 伝統的な個別株投資ならアップルの大株主となった著名投資家カール・アイカーン氏がいる。割高な証券を売り割安な証券を買う、「アービトラージ(裁定取引)」と呼ばれる投資手法も盛んで、数理的な手法を用いるルネッサンス・テクノロジーズはこの分野で最も有名だ。ほかにも、企業リストラすることでキャピタルゲインを狙う「ディストレス」や商品先物を売買する「CTA」などがある。

 根拠もなくヘッジファンドが買い上がったり売り崩すことはない。割高を売り、割安を買うだけのこと。ヘッジファンドとは犹毀姥△鯑世薪蟷餡饉〞の別称なのだ。過大評価はするべきではない。

松浦 肇(Hajime Matsuura)
産経新聞ニューヨーク駐在編集委員

日本経済新聞記者、コンサルタントなどを経て現職。ペンシルベニア大ウォートン校、コロンビア大法科大学院、同ジャーナリズム・スクールにて修士号を取得。




この記事は「WEBネットマネー2014年4月号」に掲載されたものです。