神田沙也加は七光りなのか? 『アナと雪の女王』で見せた実力とは
 昨年の11月27日の全米公開を皮切りに、世界中で大ヒットしているディズニーアニメ『アナと雪の女王』。最後の公開国は日本であり、3月14日の公開週末に1位を記録したことから、全世界50ヶ国で興行成績ランキング1位を記録するというとんでもない作品になりました。その『アナと雪の女王』で日本語吹き替えを担当しているのが、神田沙也加です。

 ここまで本作が支持された要因には、ディズニーアニメの質の高さと楽曲の素晴らしさが挙げられます。アカデミー賞でも主題歌賞(「Let It Go」)、長編アニメーション賞を受賞。

 すでに本編をご覧になった方は堪能されたと思いますが、まさにブロードウェイ・ミュージカルを観た気分にどっぷりと浸れる贅沢な作品なんです。

 それもそのはずで、作詞・作曲を担当したロバート・ロペスはエミー賞、グラミー賞、オスカー(アカデミー賞)、トニー賞の4冠を制覇。世界で11人しか成し得ていない音楽界のグランドスラム“EGOT”を史上最年少(39歳)で達成した人。パペットたちがシニカルなミュージカルを繰り広げ話題を集めた「アベニューQ」のナンバーも彼の手によるもの。

 その彼が手掛けた名曲が目白押しの、ディズニー初のWヒロインを置いた本作で、神田沙也加は妹のアナの声をあてています。いるのですが……。いまだに彼女のことを<七光り>などと発言する人がいると耳にしました。正直、残念すぎて脱力しました。

◆松田聖子の「歌唱力」と神田正輝の「演技力」を受け継いだ女優

 個人的に映画は字幕版で観るのが一番だと思っていますが、本作に限っては、字幕版、日本語版のいずれも楽しめること請け合いです。いや、むしろ、日本語版のほうがすんなり作品世界に入り込める人が多いかもしれません。それもこれも、日本語版ボイスキャストが大健闘しているから。

 神田沙也加が歌いだした瞬間、鳥肌が立ち、「あぁ、日本人も本場のキャストに全く引けを取っていない。すごい!素晴らしい!!」と手放しで嬉しくなってしまい、まだドラマはこれから始まるところだというのにスタンディングオベーションをしたくなったくらいです。

 監督が来日した際、神田沙也加が生歌を披露し、感激した監督が涙を流したことも話題になりましたが、それも十分に納得。本編で彼女が披露する1曲目(「生まれて初めて」)から、その歌唱力と演技力の高さは一目瞭然なのです。

 これまでに数多くの舞台を踏んでいる神田沙也加。のびやかかつ安定した高音ボイスが魅力で、「グリース」のサンディ、「レ・ミゼラブル」のコゼット、「ピーターパン」のウェンディなどを好演。劇団名だけで客席を満員にできる劇団☆新感線の「薔薇とサムライ」への客演で魅せたコケティッシュな魅力も本作のアナに通じるところがあります。

 そう、神田沙也加の強みは、歌だけでなくお芝居もできること。つまり彼女は「七光り」などではなく、両親の「歌」と「芝居」の才能をどちらも受け継いだ稀な才能の持ち主なのです。

 本作で姉のエルサの声をあてた松たか子も松本幸四郎の娘さん。彼女もテレビに出た当初、特に「ロングバケーション」で木村拓哉と共演したときなどは、「七光り」だと叩かれていました。ですが、現在、松たか子に対し、「七光り」などという人はいません。

 着実にキャリアを重ね、「七光り」という言葉をねじ伏せた松たか子。本作で妹を演じた神田沙也加も今後、その存在を揺るぎないものにしていくはず。舞台ファンからはすでに実力を知られている神田沙也加ですが、『アナと雪の女王』は、一気に幅広い層に、誰かの娘としてではなく、女優・神田沙也加の魅力を認めさせることでしょう。 <TEXT/望月ふみ>