東海道の出発点で"お江戸"の商業と文化の中心地として栄えた「日本橋」。その後は年配者の街というイメージでしたが、今月20日に二つの大きな商業施設がオープンするなど、現在再開発が目白押しのエリアになっています。

 江戸文化が華やかかりし頃、この町に「耕書堂」という本屋が店を構えていました。オーナーは蔦屋重三郎。稀代の名プロデューサーとして名をはせ、浮世絵の喜多川歌麿、東洲斎写楽の仕掛け人でした。江戸文化の最先端を演出し、創造し、時代に多大なる影響を与え、当時のメディア文化を花開かせていた人物です。

 作家・谷津矢車氏の描いた小説『蔦屋』には、彼がいかに時代の寵児であったかが活写されています。例えば、吉原に生まれ、吉原で商いを始めた蔦屋重三郎こと"蔦重"は『吉原細見』という本を大ヒットさせました。これは、吉原の遊女たちが紹介され、同時に格付けが載っているガイド本。いくつもの本屋が似たような趣向のものを出していたそうですが、すべての店を網羅し、番付まで掲載されていたことが受け、他店のものを圧倒していたそうです。ミシュランのグルメガイドのような存在だったのかもしれません。

 同書では、当代一流の豪勢な品をまったく嫌味なく着こなす蔦重の洒落者ぶりだけでなく、他の人とは違う彼独特の仕事論についても語られています。彼のまわりにいた当時の人々と同じように、読者も彼の魅力あふれるキャラクターにグッと引き込まれることでしょう。

 作者の谷津氏は、第18回歴史群像大賞優秀賞を受賞し、『洛中洛外画狂伝』で昨年デビュー。会社員としての顔ももつ歴史小説家ですが、27歳の若き書き手として注目されています。

 あのTSUTAYAと蔦屋重三郎の関係は定かではありませんが、書店経営を行う会社が、過去の偉大なるヒットメーカーにあやかって名をつけたという説も首肯できるもの。時代を変えたい、自分自身が飛躍したいなど、さまざまな夢を抱く人間にとってパワーを与えてくれる人物であると言えそうです。



『蔦屋』
 著者:谷津矢車
 出版社:学研マーケティング
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