「愛してるー!」は耳に届いていた?(14年2月25日撮影)

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2014年3月26日、フィギュアスケート世界選手権の男子ショートプログラムがさいたまスーパーアリーナで行われた。超満員となった会場で一際目立っていたのが、「ユヅリスト」と呼ばれる羽生結弦選手(19)のファンたちだ。

黄色い声が飛び交い、演技直前まで叫び続けるファンもいた。だが、テレビで演技を見守っていた人たちからは、行き過ぎた応援を問題視する声も多々あがっている。

集中高める中で響いた「ゆづ、愛してるー!」

ソチ五輪で日本フィギュア男子初の金メダリストとなった羽生選手。五輪で巻き起こった「羽生フィーバー」はおさまることなく、この日も多くのファンが詰めかけた。1万8000席分のチケットはほぼ完売し、「ユヅリスト」を含むフィギュアファンは早朝から行列をつくった。

羽生選手の出番は32人中29番目だった。リンクにあがると女性ファンらの声と拍手が会場を包み、熱を帯びた。応援バナーの掲出抽選に当たったファンたちは、「ゆづ」「YUZU」などと書かれた思い思いの自作バナーを手に声援を送る。羽生選手が目を閉じながら気持ちを整える間も「がんばれー!」との声が止むことはない。そして、いよいよ演技が始まろうという瞬間、一部ファンの声が響いた。

「ゆづ、愛してるー!」

熱烈な求愛とともに始まってしまったショートプログラムで、羽生選手は冒頭の4回転トゥーループで転倒。その後は華麗な滑りをみせるも、演技終了後には悔しさからか苦笑いを浮かべた。羽生選手が客席に「ありがとうございました」と笑顔でこたえる中、一心に見守っていたファンは階段を駆け降り、続々と前列の方に集まった。その盛り上がりは同じく出場していた小塚崇彦選手、町田樹選手の時と比べても際立っていた。解説者が話す中、近くを通った女性の興奮した声が拾われていたり、時折「キャー!」という甲高い声まで聞こえたりと、テレビ中継を見ているだけでもファンらの熱狂ぶりがうかがえた。

「影響したとは思わない」は羽生選手の優しさ?

演技後の声援ならば問題ないが、演技直前に声援を送る場合は慎重になる必要がある。選手は名前を呼ばれてから1分以内に演技を始めなければならず、それまでは精神を集中させている。今回、羽生選手はショートプログラム後のインタビューで「(大歓声は)聞こえていたけど、(演技に)影響したとは思わない」と話し、ミスは過信と気の緩みのせいだと振り返ったが、直前は無音状態となるのが理想的であることは間違いないだろう。

そのため、テレビで中継を見ていた人たちからは「愛してる―!」をはじめとするファンの行動に対し、

「フィギュアファンはあのタイミングで声援は送らない」
「演技入るんだから静かにしろよ。羽生くん可哀想に」
「キャーキャー言いたいだけならお家でやってほしい」
「演技開始直前の静寂を壊した非常識女どもは大いに反省しろ」

といった声が噴出している。

尾木ママこと教育評論家の尾木直樹さんも「『ユヅ〜愛してる〜』なんてパリの散歩道(編注:ショートプログラムの楽曲)流れる演技直前に叫んじゃダメ!」ブログで怒りをあらわにする。「聞こえたけど影響されたわけじゃない。自分が許せません 羽生君はファンをかばって自分責めています…でもそんな結弦君にファンは甘えてはいけないと思います!!」として、ファンのモラル向上を願った。ショートプログラムのトップは町田選手で、羽生選手は3位となった。3月28日のフリーでは、ファンの節度ある応援が求められる。