今シーズン最後の大会となる世界フィギュアスケート選手権が、26日からさいたまスーパーアリーナで開幕する。ソチ五輪で日本男子フィギュア初の金メダリストになった羽生結弦の"凱旋演技"や、現役続行か否かの決断が待たれるエース浅田真央の五輪シーズンの"ラスト演技"に注目が集まっている。

 男子は、羽生が初めて世界選手権王者の称号を手にして、"真の王者"になることを目指しており、気合が入る大会になりそうだ。五輪銀メダルのパトリック・チャン(カナダ)と銅メダルのデニス・テン(カザフスタン)が欠場する中、五輪でメダルを逃した同4位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)や同5位の町田樹、そして五輪出場が果たせなかった実力者の小塚崇彦らがタイトル争いに顔を出しそうだ。

 これに対して、ソチ五輪金メダルのアデリーナ・ソトニコワ(ロシア)と同銀のキム・ヨナ(韓国)が出場しない女子は、果たして誰が世界女王の座に就くのだろうか。男子に比べて多くの優勝候補がおり、激戦が予想される。

 その中で、浅田は競技者として最後の大会になるかもしれない日本開催の世界選手権で納得のいく演技で締めくくることができるか。連続8回出場の今大会は、4年ぶり3度目の世界タイトル獲得がかかっている。

 24日から始まった公式練習での調子は上々だった。代名詞のトリプルアクセル(3A)も成功させ、連続3回転の高難度ジャンプも軽々と跳ぶなど、滑りにもスピードがあってキレのいい動きを見せていた。25日の公式練習ではショートプログラム(SP)「ノクターン」の曲に乗ってプログラムを最後まで通し、予定の3つのジャンプをすべて成功させ、流れのある演技を披露した。

 浅田は練習後の会見で「目指しているレベルで挑戦できる最後の試合になる。ソチ五輪で出来なかったSPとフリーの両方を完璧にそろえることが目標です」と、やる気は十分だ。ソチからの帰国後は「試合の疲れもあって体力的にきつかった」と一週間ほど休み、心身の充実を図ってから今大会に向けて練習を再開したという。佐藤信夫コーチも「練習は一応、順調です。五輪後はしっかり休むように言っておいたので、一週間、彼女の顔を見ませんでした。コンディションは問題ないし、気持ちも大丈夫。練習でも気が抜けたり、やる気がなかったりなどということはなかった」と太鼓判を押す。

 ソチ五輪ではSPでまさかの16位に沈み、フリーでは世界中のスケートファンに感激の涙を流させた「最高レベルの演技」を見せた。その浅田は、天国と地獄を味わった五輪を振り返りながら、こう語る。

「オリンピックではすごく悔しくて取り返しのつかないSPをしてしまったので、この世界選手権は自分にとってすごく重要な試合ですし、いままでの経験を生かして追い込んでいけたらいいと思います。SPとは逆に、オリンピックのフリーは久しぶりにやり切ったという演技ができたので、あの時のような思いを、この世界選手権のSPとフリーでできたらいいです」

 この世界選手権でも、フリーでは6種類の3回転を計8度跳ぶことに挑戦する。高みを目指す飽くなきチャレンジャーであり続けることが、浅田の原動力になっている。ジャンプの失敗がないノーミスの演技さえ出来れば、世界女王奪還は間違いないはずだ。

 その浅田を脅かす存在でもあり、初の世界女王の座を虎視眈々と狙っているのは、ソチ五輪の団体戦で完璧なSPとフリーを演じてロシアの金メダルに貢献した15歳のユリア・リプニツカヤ(ロシア)だろう。五輪の個人戦では本来の力を発揮できなかっただけに、この世界選手権でその悔しさを晴らしたいはずだ。

 また、今シーズンでの現役引退を表明している五輪銅メダルのカロリーナ・コストナー(イタリア)も、競技者として最後の試合となる今大会で傑作のプログラムとも言えるSP「アベマリア」とフリー「ボレロ」を披露する。五輪で見せた圧巻の演技を再現できれば、2年ぶり2度目の世界タイトル獲得も夢でない。

 現役最後の大会が日本開催の世界選手権だという運に恵まれた鈴木明子が、情感のこもった演技でどう有終の美を飾るのかも注目したい。緊張感のある競技会での演技はこれが最後、ファンにとっては見納めになるだけに、鈴木はこう語っている。

「競技生活最後の大会なので、いままで滑ってきた経験のすべてをこの試合の演技にかけて、思いを込めて最後まで自分らしく滑って競技生活を終わりたいです」

 25歳で初出場して以来、4回目の出場となる世界選手権で、2年ぶり2度目の表彰台もありそうだ。

 一方、五輪初出場を果たした村上佳菜子は、ソチでは自分が満足できる演技ができず、「悔しさだけが残った」と言う。だから、この世界選手権では「オリンピックの悔しさを挽回できるように、SPとフリーでいい演技をして気持ち良く終わりたい」と抱負を語った。

 2011年にシニアデビューしてから毎年出場する世界選手権では8位、5位、そして昨年はあと一歩で表彰台の4位と、順位を上げてきた。五輪では12位と振るわなかったが、1月の四大陸選手権で初優勝するなど実力はあるだけに、地元開催の世界選手権という絶好のチャンスでメダルを獲りたいところだ。

 これまでオリンピック直後の世界選手権は、ベテランと若手の世代交代のターニングポイントになってきた。そんな観点からも、興味深い大会になりそうだ。

辛仁夏●文text by Synn Yinha