足元にある深いプールの底に四角い影が漂っています。まわりでは全面マスクに白の防護服を着た作業員が忙しく立ち働いています。ここは福島第一原発4号機で、私が眺めていたのは使用済核燃料を納めたラックでした。プールには1500体を超える大量の使用済核燃料が保管されていて、現在、その移送作業が行なわれているのです。

 2011年3月11日の東日本大震災で巨大な津波が原発を襲い、運転中だった1号機、2号機、3号機が電源機能を喪失、次々とメルトダウンを起こします。その間、定期点検で原子炉が稼動していなかった4号機のことは誰も気にしていませんでしたが、3月15日の朝に突然、壁の一部が崩落して火災が起きていることが発覚します。

 この火災について米国の専門家が、地震によって燃料プールが破壊され、使用済核燃料が露出して崩壊熱を発しているのだと主張しました。1500体もの核燃料が一挙に崩壊すれば膨大な放射性物質が飛散し、首都圏にもひとが住めなくなるという警告に日本じゅうがパニックに陥ります。しかしその後、幸いなことに、4号機のプールに水が残っていることが確認され「日本壊滅」は免れたのです。

 その4号機は燃料取り出し用のカバー鉄骨が組まれ、すでに400体の核燃料を回収し、年末までに作業を終える予定だといいます。震災後3年たって、その作業を私のような門外漢が見学できるようになったことだけでも感慨深いものがあります。

 1日平均400トンの地下水が流入する汚染水問題はあいかわらず深刻ですが、トラブルが続いていたALPS(多核種除去設備)がようやく継続運転できるようになり、水漏れしにくい溶接型タンクの増設も急ピッチで進んでいます。原子炉の底に溶け出した核燃料の取り出しには技術的な難問が山積しているものの、炉内の状況は冷温停止で安定しています。隣接する3号機でも、建屋の爆発によってプールに沈んだ大量のがれきを撤去する作業が始まっていました。

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