「北京突入なら撃墜しろ!」
 まるで“神隠し”にでもあったかのように、忽然と姿を消したマレーシア航空旅客機の事件が、大国・中国を震え上がらせている。

 ご存じの通り、同事件は3月8日にマレーシアのクアラルンプールから北京に向けて飛び立った370便が、離陸から約1時間後に消息を絶ったというもの。239名の乗客を乗せた機体はいまだ(3月16日現在)発見されていないが、この事態に習近平国家主席をはじめとする国家首脳たちが凍り付いているというのだ。
 中国の内部事情に詳しい外信部記者が言う。
 「中国は旅客機の捜索に、人工衛星まで投入。その理由を『乗客の大半が中国人だから』と明かしているが、これは外交的な詭弁なのです。というのも、同国公安部は今回の騒動を新疆ウイグル自治区の過激派と、イスラム原理主義者の混合グループの仕業とみており、この検証に焦りまくっている。政府筋では'01年に米国のワールドトレードセンタービルに旅客機が激突し、死傷者約1万人を出した『9・11同時多発テロ』の再来と評判で、これに失敗して自爆した可能性が指摘されているのです」

 実際、中国政府はこの対応に大慌てで、旅客機が消息不明となった翌日には、「もしも北京や中南海の人民大会堂に突っ込もうとした際には撃墜しろ!」と軍に通達を出したほど。また、事件時には北京で『全国人民代表大会』が開催されていたため、厳戒体制を敷いたのである。

 ただし、この中国政府の慄きぶりも無理からぬ話と言うほかはない。実は、中国国内では昨年10月、天安門広場に車が突っ込む自爆テロが勃発して以来、加速度的に反政府テロが激増しているのだ。
 外務省関係者がこう語る。
 「テロの波は今や中国全土に広がっており、天安門の事件ではウイグル自治区の独立を唱える過激派と連動したイスラム武装勢力が、犯行声明を出したほど。また、今年3月1日には雲南省昆明市でウイグル自治区の過激派組織が無差別テロを起こし、多数の死傷者を出している。さらに旅客機事件後の14日には、広西チワン族自治区で警察官が武装集団に襲撃される有様で、小さな衝突を数え上げればきりがない状況なのです」