アメリカが金融緩和の縮小を開始したことで、新興国通貨からの投資マネーの引き上げが顕著になった。今後の為替相場はどう動くのか、為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。

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 今年の外国為替市場は、米ドル高がメインテーマになる。注目すべきポイントは、アメリカの量的金融緩和策の縮小(テーパリング)の行方だ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年12月、米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小の開始を決定。米国債や住宅ローン担保証券(MBS)などの資産買い入れ額を毎月850億ドル(約8兆7000億円)から750億ドルに減らす方向へ舵を切った。

 100億ドルの減額は翌1月に実施されたが、FRBは同月末のFOMCで量的緩和の縮小継続を決め、買い入れ額を2月からさらに100億ドル減額し、月650億ドルとした。2回連続の緩和縮小の決定によって、FRBが手綱を緩めていないことが明確になったわけである。

 この縮小ペースでいくならば、3月以降のFOMCも、米国債などの買い入れ額を毎回100億ドルずつ減額していくと考えられる。つまり、年内にテーパリングが終了するスケジュールで動くはずだ。

 縮小が加速することがあっても、緩むことはないだろう。3月現在、ドル/円は調整局面にあるが、市場に大量に供給されている資金の蛇口が絞られることによって、今後、ドル高基調がより鮮明になると思われる。

 一方、アメリカの量的緩和の縮小によって、あらためて露わになったのが新興国の通貨と経済構造の脆弱さだ。新興国市場は、リスクを避けたい投資マネーの引き揚げに揺れ、不安と動揺が広がっている。

 1月には、アルゼンチン通貨ペソの急落を皮切りに、新興国通貨に売りが拡大。トルコリラ、南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアルなどが米ドルに対して軒並み下落した。トルコ、インド、南アフリカは自国通貨の防衛のため、1月末に相次いで利上げしたものの、効果は続かず、通貨安の苦境に置かれたままだ。

 結論をいえば、新興国への投資は当分控えるべきである。誤解している投資家もいるが、新興国経済の不安を解消しようと、アメリカが配慮することはないといってよいだろう。そもそもFOMCが考えることはアメリカ経済だけである。昨年9月に量的緩和策の縮小開始を見送ったのも、アメリカの内部要因によって先送りされたにすぎない。

 景気の減速懸念と金融不安がある中国も、シャドーバンキング(影の銀行)問題などの波乱の芽を抱えている。中国経済が危うくなれば、連鎖的にオーストラリア経済にも悪い影響が出てくるだろう。

 新興国のこのような状況を考えると、投資先は自ずと米ドル、円、ユーロのメジャー通貨に絞られてくるのではないか。実際、新興国通貨を売って、ドルや円を買う動きが加速している。

※マネーポスト2014年春号