今季は1月のピュアシルク・バハマクラシック(1月23日〜26日/バハマ)から開幕した米女子ツアーが、ようやく米国本土に戻ってくる。

 本土"開幕戦"は、現地時間3月20日から(23日まで)行なわれるJTBCファウンダーズ・カップ。アリゾナ州のフェニックスにあるワイルドファイアGCで開催される。

 注目は、今季で米ツアー9年目を迎える宮里藍。開幕前日は早朝からプロアマ戦を9ホールプレイし、元気な笑顔を見せた。

「バハマやアジアの試合も楽しかったけど、やっぱりアメリカ本土に戻ってくると、なんとなくホッとしますね」

 2009年、エビアンマスターズで米ツアー初優勝を飾った宮里。以来、4年連続で勝ち星を挙げてきたが、昨季は未勝利に終わった。同様に、2009年からベスト10をキープしていた賞金ランクも27位にとどまった。そして今季も、ここまで3試合に出場しているが、ピュアシルク・バハマクラシックが62位タイ、ホンダ・タイランド(2月20日〜23日/タイ)が45位タイ、HSBC女子チャンピオンズ(2月27日〜3月2日/シンガポール)が60位タイと、苦しい戦いが続いている。

 まず心配されるのは、体調だ。昨季の最終戦、CMEグループ・タイトルホルダーズ(11月21日〜24日/フロリダ州)では、最終日に胃痛で棄権した。その後、オフに入って調子はよくなったようだが、開幕戦が行なわれたバハマでは風邪をひいてしまった。さらに、シンガポールでは胃腸炎にかかって、HSBC女子チャンピオンズ開催中は、毎日点滴を打ちながらラウンドを消化。ふらふらの状態の中で、なんとか4日間を戦い切ったという。

 こうした状況を聞くと、どこか体の状態が悪いのではないか、という不安もよぎる。が、シンガポールでの戦いを終えたあと、日本に立ち寄ってしっかりと検査した結果、まったく異常はなかったという。

「(体調は)もう大丈夫です。悪いところが、何もなくてよかった。今週からがんばっていきます」

 ただ、もうひとつ気になることがある。パッティングだ。昨秋から不振に陥っていて、宮里自身、「こんなに悩んだのは、人生初」というほど深刻な状態にある。

 原因は、8年ぶりにパターを変えたことだった。それをきっかけにして、パッティングのフィーリングを失ってしまった。すぐにもとのパターに戻したが、一度ついてしまった"悪い感触"は容易に取り除くことができなかった。

 もちろん、オフの間にはその修正に取り組んだ。そこで、技術的にはどこに問題があるのか、はっきりした。切り返しの動作が速くなって、ボールを少し押し出してしまう癖がついてしまったようだ。そして、その問題はすでに改善の兆しにあって、練習グリーンではスムーズにパッティングできるという。あとは、実戦の中でどれだけできるかどうか、だ。

「だから、シンガポール(の試合)では棄権したくなかった。今トライしていることを、どうしても試合の中で試してみたかった。一打でも多く、実戦で、試合で打っておきたかったんです」

 重大かつ深刻な内容にもかかわらず、宮里は時折笑顔を浮かべながら、現状を語った。

 かつて、ドライバーでスランプに陥って、どん底を味わったことがある。しかし宮里は、そこから自力で這い上がって立ち直った。その後、世界の頂点にも立った。そうした経験と自負があるからこそ、冷静に対処できているのだろう。

 加えて、「今、やるべきことはわかっている」と話す彼女の瞳からは、確固たる決意が感じられた。少し時間は必要かもしれないが、"強い宮里藍"が戻ってくる日は、決して遠くはないはずだ。「まずは、1勝。昨年勝てなかったので、とにかく1勝したい」という目標も、宮里の堂々たる振る舞いを見ていれば、十分達成されるように思えた。

 また、宮里は今季から新たなキャディーとタッグを組んだ。そこにも、再浮上への高い意識が感じられた。

 選手とキャディーは、よく「夫婦のようだ」と言われる。そういう意味では、宮里の米ツアー1年目からキャディーを務めてきたミックとは、お互いに言いたいことを言い合える間柄で、最高のキャディーだった。とはいえ、新たな目標を持って、新鮮な気持ちでプレイすることは難しくなってきていた。

 そして今季、新たな"相棒"ケビンを迎えた。まだ3戦を消化したばかりだが、宮里は絶大な信頼を寄せて、ケビンとのコンビに手応えを感じている。

「(ケビンとは)すごくいい感じです。私がバーディーを獲っても、ダボを叩いても、いつも同じスタンスでいてくれる。素晴らしいキャディーです」

 実は、今回のJTBCファウンダーズ・カップは、宮里にとって相性のいい大会である。昨年、一昨年と、2位でフィニッシュしている。昨年はステーシー・ルイス(アメリカ)、一昨年はヤニ・ツェン(台湾)に優勝をさらわれたが、もしこの試合で勝っていたら、その後の1年間はまったく違う流れになっていたのではないだろうか。そう思うと、今年は結果を出して、復活のきっかけになることを期待してしまう。

「(この大会は)毎年スコアが出るので、どれだけバーディーを獲っていくかがポイントだと思います。そのためにも、結構フェアウェーが狭いから、ティーショットをフェアウェーに置くことが大事になる」

 周囲の期待に踊らされることなく、落ち着いてそう語った宮里は自身の足もとをしっかりと見つめていた。彼女が復活する日を、我々は焦らず、静かに待っていればいいだろう。

武川玲子●文 text by Takekawa Reiko