女子ツアーに"愛璃スマイル"が戻ってきた。

 今季開幕戦のダイキンオーキッドレディス(3月7日〜9日/沖縄県)で、斉藤愛璃が奮闘。一昨年の同大会で優勝して一躍脚光を浴びて以来、久しぶりに優勝争いに加わって2位タイでフィニッシュした。さらに、第2戦のヨコハマタイヤPRGRレディス(3月14日〜16日/高知県)でも、最終的には32位タイに終わったものの、2日目を終えた時点では8位タイと上位争いを演じた。まだ2戦消化したばかりだが、賞金ランキングは4位タイ。プレイ中に笑顔を見せるシーンが多くなり、明るさが戻った斉藤の表情からは、真の"ヒロイン"としての飛躍を予感させた。

 斉藤のひとつひとつの言葉からも、自信があふれていた。

「昨年の開幕戦(予選落ち)は、ディフェンディングチャンピオンということで、(周囲に)期待されている分、自分にプレッシャーをかけてしまった。今年は、そういう期待や重圧もないので、守りに入ったプレイをしても仕方がないですし、思い切って自分のゴルフをしようと思っていました。それが、良かったかもしれません。ただ、2位という結果は良かったと思いますが、(勝てなかったことは)とても悔しかったです」

 振り返れば2年前の2012年は、斉藤にとって、初めて本格的にツアーに挑むシーズンだった。実質"新人"という立場にありながら、開幕戦のダイキンオーキッドレディスでいきなり優勝。端麗な容姿も相まって「ニューヒロイン」として一気に注目を集めることなった。今にして思えば、それが彼女にとっては不運だったのかもしれない。

 実力以上に人気が先行し、戸惑った。周囲の期待に応えようとして、空回りした。結果、開幕戦以降は予選落ちを繰り返し、決勝ラウンドに進んでも下位に低迷した。優勝の貯金もあって、賞金ランクは44位に踏み止まり、なんとかシード権(50位以内)は手にしたが、翌2013年シーズンも振るわなかった。33試合に出場して、22試合で予選落ちを喫した。11試合連続予選落ちという屈辱も味わった。

「時の人」としてもてはやされた"ヒロイン"からは笑顔が消え、賞金ランクは89位と急降下。シード権も喪失した。さらに、今季ツアーの優先出場権を争うクオリファイングトーナメント(QT/2013年12月)でも、47位にとどまった。上位40位以内であれば、ほぼフル参戦できるレギュラーツアーの出場資格も得られなかった。

 だが、すべてを失って、逆に「吹っ切れた」と斉藤は言う。「もう失うものは何もない」――そう思えば、気持ちは軽くなった。

 このオフは、まず体のケアに努めた。その後、体力トレーニングとともに、充実した練習を消化して、1月末にはグアムで開催された第12回グアム知事杯女子ゴルフトーナメントに出場(1月30日〜31日)。2位タイという結果を残した。このとき、すでに斉藤は今季の手応えを感じていた。

「昨季は結果を出せませんでしたが、1年目(2012年シーズン)に比べると、ようやくシーズンの戦い方がわかってきた感じがしました。(1年目は)夏以降、疲れて練習ができない日も多かったんですが、そういうことも減ってきた。今年はさらにトレーニングを積んで、スイングも安定してきました。(今季に向けて)すごくいい調整ができています」

 今季ツアーのシード権を持たない斉藤だが、主催者推薦などを含めて「20試合前後は出場できる」という。本来、第2戦のヨコハマタイヤPRGRレディスも出場資格はなかったが、直近試合の3位以内という資格で出場権を得た。

「今年は、出場できる試合が限られているので、すべての試合で優勝する気持ちで戦っています。昨年は、できるだけスコアの波を小さくしようとしてゴルフまで小さくなってしまった。もう下ばかり向いていてもいけない。今年は常にアンダーパーを目指して、攻めるゴルフを心掛けていきたい」

 プロゴルファーに限らず、人間、いいときもあれば、悪いときもある。「ニューヒロイン」として騒がれたことは、決して"不運だった"とは言い切れないかもしれない。試練のときを経て、斉藤は確実に成長を遂げていた。

「振り返っても仕方のないことですが、いきなり優勝したときと比べて、今の自分ほうが確実に成長しているな、と思います。あまり声を大にしては言えませんが、今季は優勝したいのはもちろんのこと、いずれ賞金女王にだってなりたいと思っていますから、その足がかりを築いていきたい」

 まさかの賞金女王獲り発言には少々驚いた。しかし、斉藤の目は真剣だった。

「実は、私って"隠れ"負けず嫌いなんです(笑)。目標は高く持たないと、そこには決してたどりつけませんから」

 そう言って、爽やかな笑みを浮かべた斉藤。その眼差しからは「勝負の年にする」という不退転の覚悟がうかがえた。

野崎 晃●文 text by Nozaki Akira