相続税は、申告・納付をしても約1年後に税務署の調査が入ることがある。がんで夫を亡くしたAさんは、遺産総額を1億2千万円と申告したが、税務調査で「意図的な財産隠し」が発覚した。何が問題だったのか。

 税務署の調査官がとくに注目したのは、Aさん名義の2千万円の定期預金だ。夫が亡くなる2年前に、夫名義の定期預金や普通預金などの口座から多額のお金が引き出されたことを事前に把握していたからだ。贈与税を払った形跡もないことから、Aさん名義の2千万円の定期預金は、「もともとは夫の財産だったのではないか」と疑っていた。

 夫ががんだとわかったのは亡くなる2年前だった。そのときに、多額の相続税が発生すると心配した夫とAさんは夫名義の預貯金を解約し、2千万円をAさん名義の定期預金としたのだ。

 しかも台所から1千万円の現金が見つかった。

「ここに置いておけば税務調査でも見つからないと思って……」(Aさん)

 結局、税務署はAさん名義の2千万円の定期預金を夫の財産と認定した。台所の現金1千万円を含めて相続財産の意図的な隠匿に当たるとされた。つまり遺産総額は、この3千万円を加えた1億5千万円と判断されたのだ。そこに重加算税を課されることになった。

 相続税を計算するうえでの財産の価値が、配偶者の場合は遺産総額に法定相続分(法定相続人が受け継ぐ遺産の割合。配偶者は2分の1)を掛けた金額か、1億6千万円のどちらか多いほうの金額以下であれば相続税がかからない。「配偶者の税額軽減の特例」という。Aさんの場合は法定相続分7500万円すべてが非課税となるはずだった。

 しかし、この特例は、重加算税を課された場合は適用されない。Aさんは相続財産を隠匿したと判断されたことで、相続税のみならず重加算税まで払わなければならなくなったのだ。

週刊朝日  2014年3月21日号