政治の安定化でマレーシア株上昇。輸出・個人消費とも堅調に推移
昨年5月の総選挙で長期政権・与党が勝利し、政治に対する安心感から上昇基調が続いているマレーシア株。東南アジア屈指の「ハイテク輸出国」であるマレーシアは経常黒字も安定し、他の東南アジア諸国に比べてファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)も強固だ。

通貨リンギの安定がマレーシア株式相場を大きく下支えしている

2013年の東南アジア株相場を見比べると、米国FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ前議長が量的緩和縮小を示唆した5月以降、タイやインドネシア、シンガポールなどが下降トレンドに突入したのに対し、マレーシア株はむしろ上昇トレンドに転じていることが明らかだ。

マレーシア株が東南アジアにおいて独歩高を実現したのには理由がある。

昨年5月5日に行なわれた総選挙で、ナジブ首相率いる与党連合・国民戦線が過半数の議席を獲得し、50年以上も続く長期政権を維持することが決まったからだ。

「昨年5月までのマレーシア株は、総選挙がいつ行なわれるのか、長期政権は維持されるのかという不透明要因が渦巻き、不安定な相場が続いていました。結局、長期政権・与党の勝利が決まり、政治の安定が維持されることへの安心感が広がって、相場が上昇トレンドを描き始めたのです」と語るのは、日本でマレーシアなど東南アジア株の取引サービスを提供するフィリップ証券の庵原浩樹さん。

もともとマレーシアは、他の東南アジアの国々に比べてインフレ率が低く、為替も比較的安定している。しかも、経済成長率も年平均5%以上とまずまずのペースを維持。このような牋堕蠅叛長〞は、外国人投資家にとって非常に魅力的だ。

唯一の重しであった政治に対する不安が取り除かれたのだから、マレーシア株が上昇に転じたのも当然といえば当然なのかもしれない。

現地を何度も訪れている庵原さんは、マレーシアの魅力について「1人当たりGNI(国民総所得)が約1万ドルとASEAN(東南アジア諸国連合)の中で3番目に高く、人口も増え続けているので個人消費の拡大が期待できること。さらに内需だけでなく、輸出も大きな成長が見込めること」だと指摘する。

マレーシアというと、石油や天然ガス、パーム油といった豊富な天然資源を思い浮かべがちだが、実は輸出品目の1位は電気・電子機器だ。

「マレーシアは1970年代から外資を積極的に導入しており、世界中の家電や通信機器、情報機器などの有力メーカーが数多く進出しています」(庵原さん)

欧米の景気回復とともに、そうした製品の輸出は増加に転じ、マレーシアでは経常黒字が続いている。これもマレーシアの通貨リンギの安定を支えている大きな理由だ。

「インドネシアの通貨ルピアは、米国の金融緩和縮小とともに大きく売られていますが、マレーシアは通貨が安定していることも株価の下支え要因となっています」(庵原さん)

そんなマレーシア株の中で庵原さんが注目しているのは、病院運営会社のIHHヘルスケア、大手銀行のマラヤン・バンキング、通信会社のアシアタ・グループなど。

「IHHの病院には、欧米で免許を取得した医師や英語の堪能な看護師がそろっていて、地元の富裕層や外国人に人気です。マラヤン・バンキングとアシアタは、マレーシアだけでなく、東南アジア各国、その他の新興国でもビジネスを展開している点が魅力ですね。国内だけにとどまっている企業よりも、さらに大きな成長が期待できるはずです」

IHHヘルスケア(病院運営)

病院を運営する上場企業としては、世界3位の時価総額規模を誇る。
病院のほか、ヘルスケアセンター、診療所などを運営。また、マレーシア国内のほか、中国、香港、ベトナム、ブルネイ、シンガポールなどで補助的なヘルスケア事業を展開している。
運営する病院は欧米で免許を取得した医師、英語の堪能な看護師をそろえ、質の高いサービスを提供。地元の富裕層だけでなく、外国人の利用者も多い。ROE(自己資本利益率)はやや低いが、売り上げは着実に伸びている。

株価:3.66リンギ
日本円だと:約113円
売買単位:100株
時価総額:297億7400万リンギ
PER:49.6倍
配当利回り:―

マラヤン・バンキング(金融)

「メイバンク」の通称で知られる、マレーシアの大手商業銀行。
一般商業銀行業務のほかイスラム銀行業務も行なう。さらに子会社を通じて生命保険、損害保険、証券、先物仲介、リースなどのサービスも提供。投資信託や不動産投資、ベンチャーキャピタルも手がけている。
傘下のメイバンク・イスラムは、アジア太平洋のイスラム銀行としてはトップクラス。今後も、特に成長性が高いイスラム銀行部門に力を入れていく方針だ。
2014年の予想ROEは約14%と高水準である。

株価:9.80リンギ
日本円だと:約301円
売買単位:100株
時価総額:868億5900万リンギ
PER:13.34倍
配当利回り:5.76%

アシアタ・グループ(通信)

1992年に設立されたマレーシアの通信会社。
携帯電話を中心に通信サービスを展開しており、2Gネットワークはマレーシアの総人口の9割以上、3Gネットワークは8割以上をカバーしている。
インドネシア、スリランカ、バングラデシュ、カンボジア、イラン、タイなどでもサービスを提供。アジアにおける携帯電話契約者数は2億人を超えている。アジア新興国全体の成長とともにビジネスの発展が期待できそうだ。
2014年の予想ROEは約13%と高い。

株価:6.49リンギ
日本円だと:約200円
売買単位:100株
時価総額:554億3500万リンギ
PER:21.7倍
配当利回り:5.39%

※株価、指標は2014年2月7日現在。1リンギ=約31円。PER=株価收益率。

庵原浩樹(HIROAKI IHARA)
フィリップ証券 リサーチ部長

岡三証券、国際証券(現・三菱UFJ モルガン・スタンレー証券)を経て、2011年11月よりフィリップ証券に入社。化学、小売業、商社、外食セクターに強みを持つ。日本経済新聞や経済誌の人気アナリストランキングにランクインするなど信頼度も高い。



この記事は「WEBネットマネー2014年4月号」に掲載されたものです。