植草まさしの巨大マネーが入る株の見つけ方講座
株式市場では古くから「需給に勝る材料なし」といわれている。公的年金基金や日銀などの超大口プレーヤーが動けば当然、株価も大きく動く。大型ファンドの現状と習性を知ることは株式市場の流れを知ること。銘柄選択の貴重なヒントを与えてくれる。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)だけが日本の年金ではない
まだまだ増える株投資枠。大型銘柄から順に倏磴〞

GPIFの運用額は112兆円。ほかに地方公務員共済組合連合会などの公的年金のほか、厚生年金基金や確定拠出年金などの私的年金もあり、合計122兆円。GPIFがもうひとつあるイメージだ。

GPIF以外の大型基金はいずれも、株式の組み入れ比率が7〜24%と低水準にとどまっている。しかし今後、物価上昇基調が鮮明になってくると、国債などの保有比率を下げて、株式への資産配分を厚くしてくると予想される。

年金基金が株式比率を高めるときは、新たな銘柄に投資するよりも、買う理由が定まっている手持ち銘柄を買い増すのが先といわれる。このため、機関投資家の保有比率の高い大型銘柄ほど資金流入が大きくなるとみられる。

●巨大年金が買う3銘柄
【伊藤忠商事(東1・8001)】
1265円(100株)
時価総額:2兆48億円

ROEだけでなく、配当利回りも高い。時価総額が大きく、市場での売買も活発なため、買い増しが容易である。

【住友金属鉱山(東1・5713)】
1302円(1000株)
時価総額:7572億円

非鉄最大手で好業績かつ保有鉱山の埋蔵資源など含み資産も厚い。インフレ歓迎型の金鉱株でもあり、機関投資家に人気だ。

【JR西日本(東1・9021)】
4173円(100株)
時価総額:8014億円

鉄道株はコア銘柄として欠かせない。大型投資を控えたJR東海の財務負担に不透明感がある分、JR西日本の注目が高まりそうだ。

※ データは2014年2月6日現在。

JPX400にギリギリ漏れた「次点」株
定例の入れ替えや空席発生時に期待!

東証の新指数・JPX400は、ROEの高さを銘柄選定基準に加えた点が最大の特徴だ。GPIFの利用が想定されるだけでなく、JPX400に連動する投信やETF(上場投信)の設定が決まっているほか、先物の上場も見込まれる。年金などの買いが入れば、JPX400採用銘柄の株価も上がるだろう。

そこで、次の採用候補銘柄に注目。JPX400にも日経225と同様に定例の銘柄入れ替えがあるほか、経営統合などで空きが出た場合は臨時の銘柄補充が実施される。

JPX400には漏れたが、時価総額が大きく、ROEの高い銘柄は次の採用候補としてチェックしておきたい。安値で買えたらNISA口座で長期保有する手も。

●JPX400銘柄入れ替え期待3銘柄
【神戸製鋼所(東1・5406)】
156円(1000株)
時価総額:4859億円

鉄鋼と建機の2本立て。採算性のいい自動車向け鋼板の好調と、復興需要による建機の販売好調などで来期業績が楽しみな銘柄だ。

【商船三井(東1・9104)】
407円(1000株)
時価総額:4909億円

海運業界は業績変動に周期性があり、JPX400誕生と業績不振期が重なった。リストラ効果と米国景気回復で次回選定の有力候補だ。

【コロプラ(東マ・3668)】
2977円(100株)
時価総額:3531億円

位置情報ゲームなどで成長。時価総額は約4000億円と大きく、ROEも高いが、一昨年の12月上場とやや新しいのがネックだ。

※ データは2014年2月6日現在。東マ=東証マザーズ。

インフレ経済で買われるのは売上高成長株
金融、不動産、商社…。物価連動型企業を追え

そもそも年金基金はなぜ株を買うのか。最大の理由はインフレ対策である。

預金や国債は損失リスクが低い一方、株式は元本が保証されていない。しかし、物価が上昇すれば、株価も半ば自動的に上昇する傾向があり、株式は不動産と並んでインフレ耐性が強い金融商品として知られている。

これまでのデフレ経済下では現金が強く、株式は値下がり圧力にさらされていた。このため、現金に限りなく近いうえに、利息までつく国債への投資配分を厚くすることが理想的だと、ほとんどの年金基金は考えていた。

しかし、物価が上がり、現金の価値が目減りする時代になると、主役交代が起こる。国債などの確定利回り商品は物価上昇に勝てない投資先として敬遠され、国債の代わりに株式の出番というわけだ。

ただ、経済がデフレからインフレに転じる局面で、すべての銘柄が値上がりするわけではない。物価や経済規模の拡大ペースと同じかそれ以上に成長できる企業が買われるのだ。

インフレに強い業種としては、金融や不動産が代表格になるだろう。資源や食料などを扱う総合商社も「取扱額×手数料」が収入になるため、世の中の物価水準が上がるほど有利になる。

また、物価など国内経済情勢の変動とは別に、独自の成長ルートを持つ企業も頼もしい投資先になってくれる。

アベノミクスがこのまま軌道に乗り、日本の物価が上昇するなら「インフレ連動株」は期待大だ。

●売上高伸びまくりの3銘柄
【クックパッド(東1・2193)】
2848円(100株)
時価総額:941億円

時価総額1000億円以上の銘柄で、過去3年の売上高成長率が最大。料理レシピ紹介サイトを運営している。有料会員数は増加中。

【夢真ホールディングス(JQ・2362)】
876円(100株)
時価総額:653億円

建築やITなど技術者派遣事業が成長を続ける。利益増加と時価総額の増大につれて、機関投資家の保有が増えてくるだろう。

【東洋エンジニアリング(東1・6330)】
444円(1000株)
時価総額:855億円

プラント大手。リストラを経て本業強化を鮮明にし、肥料などの大型プラントを受注。人気低迷が長かった分、株価の上値は軽そう。

※ データは2014年2月6日現在。JQ=ジャスダック。

機関投資家は他の機関投資家の保有株を見ている
横並びの銘柄選定で、同じ銘柄に資金流入

機関投資家の運用成績は相対評価の世界。値上がり率ではなく、指数に対する勝ち負けを同業他社と競争する。自分のファンドが30%の利益を出しても、他のファンドが50%なら負け。

このため、ほかの機関投資家の運用には敏感だ。機関投資家は銘柄選定の土台となる投資理論や着眼点も似ており、結果的に同じ銘柄に資金が流入し、株価が上がる。かつては、取引打ち切りをちらつかせて証券マンからライバルの買い銘柄を聞き出すファンドマネジャーもいたほどだ。

●外資系中小型株ファンドが買っている3銘柄

【キーエンス(東1・6861)】
4万880円(100株)
時価総額:2兆4855億円

今期は6年ぶりの最高益更新が濃厚。来期はさらに増益が予想され、最終利益1000億円台乗せも意識される勢いだ。

【エア・ウォーター(東1・4088)】
1512円(1000株)
時価総額:3004億円

産業用ガスを供給している。他社買収にも積極的で、成長シナリオを明確に提示している点も、機関投資家に高く評価される理由だ。

【信越化学工業(東1・4063)】
5703円(100株)
時価総額:2兆4643億円

量産効果がものをいう塩化ビニールと得意のシリコンウエハーの2本立て。内外機関投資家への丁寧な情報発信で知られる。

※ データは2014年2月6日現在。

日銀のETF買いのホントのところ

Q1 いつ買うの?
株安の日の午後に買うようだ。買値を抑えるため、決して上値は追わない。TOPIX(東証株価指数)の午前の終値で1%安が買い出動の基準といわれるが、例外もある。

Q2 どうやって買うの?
日銀が信託銀行に買いを指示すると、信託銀行が証券会社に注文。証券会社はETFの指数構成銘柄をすべて市場から買い、ETFの運用会社に持ち込み、ETFを新たに発行してもらって日銀に渡す。

Q3 市場への影響は?
ETF買いは為替介入と違い、日銀が買い注文を市場に直接出すのではなく、日銀と証券会社の間に信託銀行が入るので、急な相場変動はない。しかし、証券会社がETF組み入れ株を買うので、株安の歯止めになるとされる。

Q4 買ったETFはどうなる?
ETFの保有期限は「未定」。このため、購入したETFはすべて日銀が保有している。買い入れの予定額はあるが、上限はない。
日銀はETF買いとは別に、金融システム安定のために2002年から2004年にかけて株式を買ったが、2016年4月から2021年3月末までに処分する予定だ。

植草まさし
金融ジャーナリスト

外資系金融機関を経て、現職。マーケットの裏も表も知り尽くす事情通。日々、特ダネを探して東京・兜町、日本橋を歩く。



この記事は「WEBネットマネー2014年4月号」に掲載されたものです。