「テレビ朝日」内「アニメ・ヒーロー」ページより

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 テレビ朝日系列で全国放送された『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』で、しずかちゃんが全裸になるシーンに劇場公開された際にはなかった修正が入った問題について、本サイトの取材に対するテレビ朝日の対応は答えになっていない回答であった。

 今回、本サイトの取材依頼に対応したのは、テレビ朝日の広報部。「質問内容をFAXしてください」という担当者の求めに応じて質問事項を送付したところ、返ってきたのはわずか数行の答えであった。

 まず、本サイトから送付した質問事項とその回答を掲載しよう。

【本サイトからの質問事項】
1:今回の修正指示にあたって、どのような基準をもとに判断を行ったのでしょうか。

2:判断にあたっては、御社の番組基準及び民放連【編注:日本民間放送連盟】の放送基準が基本になっていると思いますが、間違いありませんか。

3:上記の基準以外に、考査の際に内規はお持ちですか?

4:民放連の放送基準の第11章「性表現」の部分では「(78) 全裸は原則として取り扱わない。」とはなっていますが、この部分は1970年から現在まで変更がありません。その状況で、御社様が過去に放送した番組では過去の『ドラえもん』におけるしずかちゃんの入浴シーンのみならず1987年から放送された『エスパー魔美』でも全裸の描写は放送されています。そのため、御社で内規が存在するのであれば、その変更が。あるいは、担当者の判断基準の変更、もしくはたまたま担当者の主観で判断したのいずれかにあてはまると思いますが、どれでしょうか?

5:放送前の素材のチェックについてです。通常、納品された素材は、局内ではどの部署が、どのようなフローで判断を行っておりますか。考査を担当する部署・人数なども教えて下さい。

6:今回は、完パケ納品されたものを観た上で判断をされたのでしょうか。あるいは、事前に修正依頼を行っていたのでしょうか?

7:修正作業は、シンエイ動画様が行ったということでよろしいでしょうか?

8:今回の修正は局側の判断でしょうか。あるいは、アサツーディ・ケイ様【編注:アサツーディ・ケイは製作に参加】も判断に関与していらっしゃいますか?

9:問題となっている作品は2013年に劇場公開され、すでに子どもを含めて大衆の目に触れているものです(観客動員数で約348万人の目にはふれていると思います)。そのために自主規制としては「過剰である」という意見が市民から出ているわけですが、どのようにお考えですか?

【テレビ朝日広報部の回答】

 放送したものが全てであり、この番組に限らず、番組の制作過程につきましては、従来からお答えしておりません。

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 いかがだろう。本サイトの質問に対して、まったく回答になっていない。さっそく広報部に電話したところ、担当者は「回答に書いてあることがすべてです」と繰り返すばかりであった。

 まず、よくわからないのは、先方が電話で「すべての質問事項に対する回答が、FAXでお送りしたものです」と繰り返したことだ。果たして、読者は彼らの回答が質問1、2の回答といって理解できるだろうか? 少なくとも筆者は理解できない。

 次にひたすら「書いてあることがすべてである」と繰り返す担当者に対して「従来というのはいつか」と聞いたところ「これまでもずっとです」というのである。「これまでもずっと」というのは、テレビ朝日の開局からずっとということなのか。そう問いただしてみたところ、再び「書いてあることがすべてですから」と繰り返すのでである。

 さらに回答では、「制作過程」については答えないとしているが、今回の質問は考査についてであると指摘したところ、「テレビ朝日では考査も含めて制作だと考えている」というのである。

 かりにも有限の電波を割り当てられて放送している放送局がこの態度でよいのだろうか。その点を指摘したところ、ついに「うちは公共放送ではなく、私企業ですから」と言い出すのだ。

 しかも、彼らの回答は先日、J-CASTが取材に対する回答とまったく同じものである(外部参照)。実は、本サイトが送った質問をまったく見ることなく検討しているのではないかと聞いたところ「そんなことはない。個別に検討して返答している」というのである。それでは、どのような検討を、どういう部局で行ったのか。もしかして、ちゃんと社長決裁までとったものなのかと聞いてみた。それに対して担当者は「検討の過程は説明できない。テレビ朝日として回答しているので、社員すべてが同じ意見です」というのである。

 さらには、こうして問題点を追求する筆者に「言質を取ろうとしているんでしょ」と言い出すのであった。
 
 この不毛な電話での取材は約30分あまり。「そこまで言うなら、今から出向くから話をしようじゃありませんか」という筆者に、担当者は「回答は紙で行うことになっている」と繰り返すばかり。

 もちろん、対応した広報部の担当者にはなにも含むところがない。ところが、「あなたはオカシイと思わないのか」と問うたところ彼は「個人的な質問には、お答え致しかねます」と言うのである。この担当者と意見の一致をみたのは「別にあなたに恨みはないが、私は問題だと思うので記事には書かせていただく」といったところ、「それは言論の自由がありますから」と答えた部分のみである。

 今回のテレビ朝日の対応の問題点は、自主規制を完全なブラックボックスにしていることにある。彼らは「制作過程」だとして、納品された素材をチェックして放送するまでの過程を一切明らかにしようとしない。自主規制を行い、その理由や過程をまったく説明しないのだ。これは、もはや"検閲行為"といっても言い過ぎではない。すでに問題は"単なるアニメのシーンひとつ"の云々ではすまなくなっていることを、彼らは認識しているのだろうか?
(取材・文/昼間 たかし)