松山(左)とポールター(右)の騒動は世界中の注目を集めたけれど…(撮影:福田文平)

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 キャデラック選手権3日目の夜、閉店間際のコーヒーショップにぎりぎりセーフで飛び込んだら、顔見知りの北アイルランド人記者と出くわした。「今日はジャパニーズにとって大変な一日だったね」。その記者は、そう言って労いの声をかけてくれた。

 米ツアーや世界の舞台で母国の選手に何かが起こると、その国のメディアは朝から夜遅くまで対応に追われ、てんてこ舞いになる。その大変さをこの記者は何度も経験して知っている。だから、この日、日本メディアがどれほど多忙で心身ともに疲弊していたかを、彼は気遣ってくれたのだ。
 だが、同じてんてこ舞いでも、彼ら北アイルランドのそれと日本メディアのそれとでは、内容や事情がずいぶん違うと思わずにはいられなかった。北アイルランドの記者たちが超多忙だったのは母国出身のローリー・マキロイやグレアム・マクドウェルがメジャーの舞台で優勝を飾ったり、惜敗したりしたときで、彼ら記者たちは母国の選手を囲み、取材を続け、夜遅くまで記事を書いていた。そんな彼らの姿を目撃するたびに、大変そうだなと思いながらも、羨ましいというジェラシーを抱いた。
 この日の日本メディアは確かに多忙だったけれど、それは日本人選手が大活躍したり首位に立ったりして忙しくなったわけではない。忙しくなった原因は、あのツイッター騒動が起こったからだ。
 今さらコトの経緯の詳細を説明する必要はないだろう。2日目の13番で松山英樹がグリーンをパターで叩き、窪ませてしまったにも関わらず、それを直さなかったことを、後続組のイアン・ポールターが目撃し、「松山はイディオット(=愚か者)」とツイートしてしたあの一件が、3日目になって世界の注目を集める一大騒動と化してしまったために、日本メディアはその対応に追われることになったのだ。
 スコアリングテントの近くのインタビューエリア。そこで日本人選手を日本メディアが囲み、欧米メディアも囲み、さらには欧米メディアが日本メディアに日本人選手の情報を次から次に尋ね、ああでもない、こうでもないと、てんやわんや。
 ドラルの同じ場所で、以前にも似たようなことがあったなあ。そう、3年前、東日本大震災が起こったのは、この大会のときで、あのときは池田勇太や藤田寛之や石川遼が欧米メディアにも日本メディアにも囲まれ、そして私たち日本メディアは対応に追われた。
 このブルーモンスターでは日本人選手がメディアに囲まれる事態がどうしてだか起こる。けれど、04年大会で4位に食い込んだ丸山茂樹が注目されたときを除けば、近年、日本人選手がこの場所で成績によって欧米メディアに囲まれたことがほとんど無いという事実がやっぱり淋しい。
 松山英樹は米ツアーに初の本格参戦で、先週と今週は自身初のフロリダで、大会初出場で、ドラルを見ること自体が初めてで、とにかく「初づくし」だった。そこに左手首痛という爆弾まで抱えた上に、ツイッター騒動という不測の事態まで起こり、そのすべてに対応しなければならなかった22歳の心身は、きっとギリギリだったことだろう。
 だが、練習ラウンドが1度ぐらいしかできなくても「1回見ればコースは覚えられる」と言ってのける松山は、ポールターらに謝罪してからスタートした3日目でさえ、騒動のプレーへの影響は「別にない」と否定して見せた。
 それが強がりなのか、本心なのかは松山のみぞ知るところ。松山は松山なりに必死に戦い、健闘している。あのツイッター騒動だって、迅速に冷静に対応し、その直後にアンダーパーで回ってくる度胸の良さも見せつけたのだから、そりゃあ彼は頑張っている。
 けれど、やっぱり最終的には上がってナンボだ。松山だって「健闘しました」で終わらせるつもりはないはずで、34位に終わった今大会の結果を、彼が真摯に受け止め、生かしていけるかどうかが、彼の今後を左右することになる。
 まだ22歳でルーキーで初出場の松山がWGCの舞台で34位は「頑張った」と見ることはできる。だが、初出場した昨年の全米オープンでも全英オープンでもトップ10に入った松山なのだから、このドラルでも上位入りできる潜在能力は十分にある。
 その力をフルに発揮して、優勝争いができる日、勝利を挙げられる日は、いつごろ到来するのだろうか。優勝争いを終えた母国の選手を囲み、夜遅くまで対応に追われる多忙な日は、いつごろ訪れるだろうか。
 まだまだ、すべてが未知数だ。誰にとっても大切なのは「忍耐」の二文字。そんなことを今さらながらに痛感させられた4日間だった。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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