ソチ五輪閉幕の約1か月後、3月26日から世界フィギュアスケート選手権がさいたまスーパーアリーナで開催される。男女ともに、各選手がそれぞれの思いを持っての大会になるはずだ。

 そのなかでも、ソチ五輪金メダリストの羽生結弦は、2月25日にソチから帰国後、27日には早くも本拠地のカナダ・トロントへ渡り、世界選手権へ向けての練習を始めている。ソチでも「五輪が終わってちょっと気が抜けたところもあるが、僕にとっては世界選手権もすごく大事な大会。世界選手権はまだ一度しか表彰台に上がっていないので、頑張りたい」と話し、意欲を見せていた。

 さらに、彼自身「金メダルをもらった時は嬉しさの方が大きかったが、時間が経つにつれて悔しさが甦(よみがえ)ってきた。だから自分を高めるためにも、練習ではいろんな種類の4回転ジャンプに挑戦していきたい」とも話していた。

 4年後、韓国の平昌(ピョンチャン)五輪へ向けて、もっともっと強い自分になりたいという思いを持ってのスタート。その第一歩が世界選手権になる。そこで、ソチで納得できなかったフリーを完璧に演じ、スッキリした気持ちで五輪シーズンを終わりたいという思いは強いはずだ。

 今回はソチ五輪銀メダルのパトリック・チャン(カナダ)と銅メダルのデニス・テン(カザフスタン)がエントリーしていない。そのため羽生にとっては、五輪王者として他の選手の挑戦を受けて立つ大会になる。

 そんな立場を羽生がどう乗り越えていくのかは、来シーズン以降も続いていくだろうチャンとの戦いを見据えたうえで重要なもの。自信に満ちた演技で"真のチャンピオン"に成長していく姿を見せてくれることを、誰もが期待している。

 また、他の男子日本勢では、ソチでは羽ばたききれなかった町田樹がどこまでその力を発揮できるかにも注目したい。ソチではショートプログラム(SP)11位発進からフリー4位で巻き返して総合5位にはなったが、得点は自己最高を10点以上下回る253・42点。

「得点も、演技内容も悔しかった。僕にとってソチ五輪は、いいパフォーマンスをしてメダルを獲ることが絶対的な目標だったので、それが叶わなかったことが悔しい」

 ソチ五輪のフリーの後にこう話していた町田だが、「この五輪はとても大きな舞台だったけど、僕の人生の中では通過点でしかない。ここで得た貴重な体験を今後の人生でおおいに活かしていきたい」とも話した。

 町田にとって初出場となる世界選手権だが、ソチで得た経験は大きなもの。ここでメダル獲得となれば、スケーターとしてさらに成長していくきっかけになるはず。また、盒饗臺紊侶臂譴妊船礇鵐垢鯑世疹塚崇彦には、まだまだ羽生や町田に負けてはいないという意地を見せてほしいところだ。

 男子で最大のライバルになるのは羽生と同じブライアン・オーサーコーチの指導を受ける、ソチ五輪4位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)だろう。また、ソチ五輪7位のハン・ヤン(中国)のほか、ロシア選手権で優勝しながら五輪代表をエフゲニー・プルシェンコに譲ったマキシム・コフトン(ロシア)や、ソチでは不調だったケビン・レイノルズ(カナダ)が、調子を取り戻せば怖い存在だ。

 いっぽう女子の最大の見どころは、現役引退か続行かを「ハーフ・ハーフ」としている浅田真央がどんな演技を見せてくれるかだ。ソチ五輪ではSPでシーズンベストを大きく下回る55・51点での16位発進というまさかの展開から、フリーではトリプルアクセルをクリアに決めて142・71点を獲得。総合6位までジャンプアップして底力を見せてくれた。

 浅田は、フリーは「人生最高の演技」と納得していたが、滑走順がさらに後ろだったら、演技構成点がもう少し加算されていたはずで、世界選手権での得点に注目が集まる。

「バンクーバーではSPはよかったが、フリーは納得できなかった。今回のソチは、SPはダメでもフリーは納得できたから、ふたつ合わせればいい五輪だと思う」と浅田は話していたが、ファンが待ち望んでいるのは、SP、フリーの両方で浅田自身が納得のいく演技をしたうえでの笑顔だろう。彼女自身、今回の世界選手権を心から満足できる大会にしてこそ、次への一歩を踏み出せるのではないだろうか。

 そんな浅田のライバルになるのは、ソチの銅メダリストで、フリーの『ボレロ』では圧巻の演技を見せたカロリーナ・コストナー(イタリア)と、個人では5位と不本意な結果ながら、団体で金メダル獲得に貢献したユリア・リプニツカヤ(ロシア)だ。ただ、地力を考えても、完璧な演技をすれば浅田が勝つ可能性は大きい。ソチ五輪優勝のアデリーナ・ソトニコワ(ロシア)は補欠のエントリーで出場は未定だが、ソチ五輪の金メダリストとして、できれば浅田ともう一度勝負をしてもらいたいところだ。

 ほかの日本人選手では、ソチでは足の痛みで力を発揮しきれず8位に終わった鈴木明子が、今シーズン限りで競技から引退することを表明しており、有終の美となる演技に期待が集まる。また、初めての五輪となったソチで12位だった村上佳菜子は、次代を担うスケーターとして、存在感を示すことができるかに注目したい。

 世界選手権の開幕まであと約2週間。2013−2014シーズンの締め括りとなる戦いで、誰が頂点に立つのか。日本勢の活躍に期待しながら、楽しみに待ちたい。

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi