メディナへの入口、フランス門。夜は警備も閑散として、警官の姿があるだけ

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 チュニスでいちばんの観光地、メディナ(旧市街)の入口に建つフランス門の下で私は途方に暮れていた。

 モロッコのマラケシュやフェズと同じく、チュニスのメディナは迷路のようになった城壁都市で、細い路地に金物細工や衣類、靴、革製品などを扱う店がところ狭しと並び、夕方になれば買い物に集まる庶民の活気にあふれる、とガイドブックには書いてある。私がメディナに着いたのはまだ夜の7時過ぎだったが、活気どころかすべての店がシャッターを下ろし、フランス門前の広場からは街灯もない真っ暗な細い道が幾本も続いているだけだ。モロッコのメディナは深夜まで地元のひとや観光客で賑わっていたが、それとはまるで違う。おまけにびしゃびしゃと冷たい雨まで降ってきた。

 それでもせっかく来たのだからと、路地の一本に入ってみた。真っ暗な道はどこまでいっても一筋の明かりすらなく、小型の懐中電灯をかざしながら時折り足早にひとが通り過ぎていく。チュニス料理の代表的なレストランはメディナの中にあり、夜11時過ぎまで営業していることになっているが、そんな店の気配すらなく、それ以前にどこもかしこも暗くて自分がどこにいるのかすらわからない。地元のひとにでも案内してもらわなければ、不案内な観光客にはとてもたどり着けそうもない。5分ほど歩いてみたが、あきらめて引き返すことにした。

街にも駅にも人の気配がほとんどない

 新市街からメディナに通じるのはハビブ・ブルギバ通りで、中央に街路樹の植えられた遊歩道があり、周囲にはフランス植民地時代の大聖堂や劇場、大使館などの建物が並んでいる。その周辺には洒落たカフェが並び、市民の憩いの場になっている、とやはりガイドブックにはあった。

 たしかにそれらしき店はあった。だがそのうちの一軒は夜になるとバーに変わるらしく、広い店内はビールのジョッキを手にした地元の男たちでほぼ満席だった。チュニジアは世俗化が進んでいて飲酒も比較的自由だと聞いていたが、まさかこんなに堂々と酒を飲んでいるとは思わなかった。だがそこに女性の姿はなく、料理やつまみを食べている客もいない。ただひたすらビールを飲みタバコを吸いながら、男たちがなにごとか議論(口論?)しているのだ。

 その隣の店は、コロニアル調のホテルを改装したレストランで、テラス席も用意されていた。入店時には金属探知器を通るような店だが、実際はレストランというよりはイタリアンのファストフード店という感じで、閑散とした店内で家族連れや地元の若者が2、3組、冷めたピザをかじっている(ここではアルコールは出ない)。ずいぶんとわびしい雰囲気だが、ほかに選択肢もないので、ここでサラダとペンネを頼んで夕食にした。

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