障害者スポーツの祭典、パラリンピックの第11回冬季大会がロシア南部のソチを舞台にまもなく開幕する。現地時間の7日20時(日本時間8日午前1時)から黒海沿岸のフィシュト・スタジアムで開会式が行なわれ、16日までの10日間に5競技72種目で金メダルが争われる。45カ国から約550人の選手が参加。

 日本の選手団はアルペンスキーに12名、ノルディックスキー(クロスカントリースキーとバイアスロン)に8名の計20選手が出場。どちらも現地8日から競技がスタートする。主将はアルペンスキーの森井大輝(富士通セミコンダクター)が、旗手はノルディックスキーの太田渉子(日立ソリューションズ)が務める。

■大目標は、表彰台独占

 アルペンスキー日本チームは"史上最強"の呼び声も高い。特にチェアスキー(専用のいすに1本のスキーを取り付けた特製スキー)に座って滑る座位(シッティング)クラスの選手たちは、現世界ランキングの上位者揃いで、その一角を担う森井は「日本チームで表彰台独占が目標」と力強い。

 ソチパラリンピックが4大会目となるベテランの森井は、高速系種目にも技術系種目にも強いオールラウンダーだ。2006年トリノ大会では大回転で銀、10年バンクーバー大会では滑降で銀、スーパ大回転で銅メダルに輝き、11−12年シーズンはワールドカップ(以下、W杯)で総合優勝も果たしている。ソチでは、「のどから手が出るほどほしい」という自身初のパラリンピック金メダルを狙う。

 森井と同じく座位クラスの選手で、卓越したターン技術から"回転のスペシャリスト"と呼ばれる、鈴木猛史(駿河台大学職員)も表彰台候補のひとりだ。パラリンピックは今大会で3回目になる。本命の回転はトリノ大会で12位、バンクーバーで15位と悔しい結果に終わった。バンクーバーは大回転で銅メダルを獲得したものの、"スペシャリスト"として「今度こそ、回転でメダルがほしい」と鈴木は語る。

 昨シーズンのW杯では総合優勝も果たし、4年間で大きな成長を見せたが、「一番の成長はメンタル面。これまでプレッシャーから力を発揮できないレースが多かったが、森井(大輝)先輩から『お前は速い。普通に滑るだけで表彰台争いに入れる』と励まされ、自分の滑りに自信を持てるようになり、成績も上がってきた。バンクーバーでの銅メダルは運がよかっただけ。ソチでは自分の実力で金メダルを獲りたい」と意気込む。

■「打倒ロシア」が合言葉

 ノルディックスキーは、"雪上のマラソン"と呼ばれるクロスカントリースキーと、バイアスロン(クロスカントリースキーと射撃の複合競技)の2競技が行なわれる。両競技とも前回バンクーバー大会ではロシア選手団が圧倒的な強さを見せた。"地の利"を得ることになる今大会も強敵ではあるが、その牙城を崩すべく、日本チームは4年間、練習に励んできた。

 クロスカントリースキーでは1998年長野大会から5大会連続出場となる立位、新田佳浩(日立ソリューションズ)が前大会で金メダルを獲得したクラシカル・ロング(10キロ)で2連覇を目指す。「ベテランの選手が若手を引っ張り、次の18年平昌(ピョンチャン)につながる大会にしたい」と、ベテランならではの目標も掲げる。

 バイアスロンでは、2大会連続出場の座位、久保恒造(日立ソリューションズ)に注目だ。バンクーバーでロシア勢に苦杯をなめ6位に沈んだ悔しさをバネに、「ソチを目指して4年間、やるべきことはやってきた」と胸を張る。特に射撃の精度では群を抜き、先シーズンのW杯では日本選手初の総合優勝も果たした。走力に勝るロシア勢対策として、久保はこの4年間、特に上り斜面での滑りの技術を磨き、勝負できる走力も培った。9日に行なわれるクロスカントリー・ロング(15キロ)で弾みをつけ、11日のバイアスロン・ミドル(12.5キロ)で悲願の金メダルを目指す。

 女子は3度目のパラリンピック出場となる太田が、初出場だったトリノ大会で銅メダルを獲得したバイアスロンで2度目の表彰台を狙う。レースは太田が旗手を務める開会式翌日の8日に行なわれるが、メダルを獲って、「日本選手団に勢いをつけたい」と闘志を燃やす。

 ソチでは上記3競技に加え、8カ国が出場するアイススレッジホッケーと、10カ国が出場する車いすカーリングも行なわれる。残念ながら、日本チームの出場はないが、世界上位国の戦いぶりを観るチャンスでもある。

 今大会は冬季パラリンピックとしては初めて、期間中毎日、国際パラリンピック委員会(IPC)が各競技会場からインターネットでのライブ中継を計300時間以上も行なう予定にしている。試合後にはオンデマンドによる録画映像も視聴できる。パラリンピック競技の迫力や醍醐味を、この機会にぜひ感じて、味わっていただきたい。

※文中の競技日程は現地の日付です。(時差は+5時間)

星野恭子●文text by Hoshino Kyoko