本作は作品賞、助演女優賞の他にジョン・リドリーが脚色賞を受賞
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先日行われた第86回アカデミー賞、日本では『風立ちぬ』の受賞や、レオ様初のオスカー!? と注目を集め、発表を楽しみにしていた方も多かったのでは?

いざ蓋を開けてみると、『ゼロ・グラビティ』が数々の賞を総ナメ。そのまま最後まで逃げ切るかと思いきや、授賞式のラストを飾る作品賞において『それでも夜は明ける』が受賞した。その瞬間、会場にいた本作の監督・キャストらが喜びの声をあげ、場内は感動ムードに包まれた。

本作は、スティーブ・マックイーン監督が、キウェテル・イジョフォーを主演に実話をベースに描いた衝撃と感動のヒューマンドラマ。大ヒット中の『ゼロ・グラビティ』や『ウルフ・オブ・ストリート』を押さえての受賞に、日本でも一気に注目が集まっている。

とはいえ『え? スティーブ・マッククイーン? キウェテル・イジョフォーって誰?』という声もチラホラ…。早速ストーリーからご紹介しよう。

■ストーリー
1841年、アメリカ・ニューヨーク州、サラトガ。バイオリニストのソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は、生まれた時から自由証明書で認められた自由黒人で。白人の友人も多く、豊かな暮らしを営んでいた。教養や経済的にも恵まれていた彼にとっての宝ものは、愛する妻と娘、息子。

しかし、ある日突然知人の紹介をきっかけに誘拐され、家族も財産も名前すらも奪われ、遠く見知らぬ土地へ奴隷と売られてしまう。奴隷商人の手によって大農園主の元へと売られるソロモン、その後の彼には想像すら出来ない壮絶な人生が待ち受けていた…。

■ブラッド・ピットも参加、感動の実話を映画化
本作は、すべてアメリカで実際にあった話。黒人音楽家ソロモンが1841年から12年間強いられた奴隷生活の手記(アメリカでは1853年にベストセラーに)をスティーブ・マックイーンが映画化。マックイーンといえば2011年、セックス依存症の男の話を描いた『SHAMEーシェイムー』で日本でも大いに話題を呼んだ鬼才だ。そして、その才能に惚れ込んだのがブラッド・ピット。これまで数々の作品をプロデュースし、大ヒットへと導いてきた彼が、『もしあとひとつしか映画をとれないとしたら、作るべきはこれだと思った。」と語るほど、監督への信頼と本作への情熱は並々ならぬものがあったよう。

■輝きを放つ俳優たちの渾身の演技
そんな監督やプロデューサーの熱意の元に集まったのが、主演のキウェテル・イジョフォー。奴隷主エップスに執着されるパッツィー役にルピタ・ニョンゴ。その奴隷主にはマイケル・ファスベンダー(『SHAMEーシェイムー』主演)、ソロモンの最初の所有者に世界が大注目のベネディクト・カンバーバッチほか、ポール・ジアマッティ・ポール・ダノら、強烈な個性を放つ実力派たち。
主演のキウェテル・イジョフォーはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、ルピタ・ニョンゴは長編映画初出演にして見事助演女優賞を受賞。本作への出演は1000人の中からの大抜擢というラッキーガールだが、実はイエール大学で演劇を学び、自ら監督・脚本・編集も手がける才女なのだ。受賞の際には水色の美しいドレスを身に纏いオスカーを握りしめながら「どこの出身であろうと夢は叶う」と涙ながらに語った姿が印象的だった。

■最後に
主人公ソロモンが強いられる不条理で残酷な扱いに、何度も胸が締めつけられる。さらに弦楽器や木管楽器をベースにパーカッションが加えられたハンス・ジマーの音楽が尚更、心に揺さぶりをかける。

これが実話だと思えば思うほど、目を覆いたくなるのだが、そんな闇に光り続けるのが、ソロモンが心に秘め続ける希望だ。その希望を、マックイーン監督は決して観客の涙を誘うカタチではなく、静謐に高潔に描き、見る者に静かに熱く語りかけてくる。

既にご覧になった方々からは、最後まで家族を思い続けるソロモンの生き様に感動の声が寄せられ、一方では、歴史認識の大切さ、己の私欲に突き動かされる奴隷主の態度に我々自身を省みるコメントも。さまざまな視点から観る者の心の奥深くに触れる感動作だが、個人的に感じたのは、本作は実話をベースにリアルな映像にこだわった作品ではあるものの、映画監督でもあり、彫刻家、写真家としてアート界でも有名なマックイーン監督ゆえか、衣装のこだわりやスクリーンに広がる景色など随所に美しさが潜んでいること。なので、過酷なシーンが続くのはちょっと、、と見るのをためらっている女性は、是非そのハードルを超えて頂きたい。

ラストには、そんな不安を凌駕するタイトルにふさわしいエンディングが待っている。

「それでも夜は明ける」は3月7日より全国ロードショー