「業績アップで給料増」「消費増税影響なし」「法人税減税で税収増」……日経新聞の書いている通りなら、日本経済の未来はバラ色である。だが、自分たちの都合に合わせて、現実から目を背けているとすれば……それはもはや「ファンタジー」の世界である。

 日経新聞といえば、日経平均株価を算出していることでも知られる。我々は、この日経平均そのものについても深く知る必要がある。
 
 そもそも日経平均は、日経新聞が東証一部上場約1700銘柄の中から「市場流動性と業種間のバランス」で選んだ、わずか225銘柄の平均に過ぎない。日経は日々、“日経平均こそ景気指標のすべて”かのように報じるが、「株価の実態を反映していない」と指摘する専門家も多い。
 
 株式運用会社「ミョウジョウ・アセット・マネジメント」代表の菊池真氏が、次のように解説する。
 
「日経平均は、指標としては価格形成がいびつだとされています。単純平均のため、株価の高い一部の株の動きによって平均が大きく左右されてしまうからです。例えばファーストリテイリング、ソフトバンク、ファナックの上位3銘柄だけで構成比率は約20%と5分の1を占める。これら一部の銘柄の動向に、日経平均そのものが引きずられてしまうわけです」
 
 だからこそ、日経平均は乱高下を繰り返すことになるが、たとえ下落局面にあっても、日経は「中長期的には株高の流れ」を強調し、景気の先行きは明るいという姿勢を崩さない。
 
「実は日経平均株価が上がると、日経新聞を定期購読していない人でもその日の値動きを気にするためか、駅売りの夕刊が売れる。株価を上げるためには、大企業の業績アップが必要で、必然、法人税は下げたほうがいいとなる。正直、日経が安倍さんを支持しているというわけではなく、安倍さんが大企業の株価を上げるような政策を続けるかぎり、応援し続けるということです」(日経新聞関係者)

 確かに、日経はもともと安倍政権べったりだったわけではない。たとえば日経は、昨年1月16〜21日には、4回にわたって「安倍政権経済政策の課題」というテーマで識者の意見を紹介し、
 
〈デフレから悪性インフレへの急転あり得る〉
〈金融政策だけでは高い成長率を維持できず〉
〈公共支出で所得増えても一部は海外に流出〉
 
 と、アベノミクスに懐疑的な論陣を張っていた。だが、直後の1月22日に政府と日銀の物価目標2%の共同声明が出て、株価が大幅に上昇した途端、アベノミクス礼賛の論調にコロッと転じたのである。
 
 日経新聞OBの田村秀男・産経新聞特別記者は、次のように苦言を呈する。
 
「元々、日経は株式市場に重点を置いた紙面で他の追随を許さない特徴があり、読者も景気がよくなっているという記事を期待している側面があります。だからといって経済政策の世論形成にも影響力のある新聞が、意図的なトーンの報道に偏るのは望ましくない。経済指標を見ても、景気回復とは反対の数字も出ている。もっとバランスを取るべきでしょう」
 
 日経は「冷静かつ客観的に報道しています」(広報グループ)という。
 
 安倍首相がカブを持ち上げ「株上がれ〜」と叫んだように、ただ日経平均の上昇だけを夢見る日経は、いつの間にか安倍政権の妄想、つまり「アベノファンタジー」に浸りきり、日本経済の現実から目を背けようとしているのではないか。

※週刊ポスト2014年3月14日号