左から、スキーフリースタイル女子ハーフパイプの小野塚彩那、女子パラレル大回転の竹内智香、フィギュアスケート男子の羽生結弦、スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢、平岡卓 (写真:フォート・キシモト)
「報奨金は何に使いますか?」という質問。ソチ五輪のメダリストに対して、メディアが頻繁に聞いています。「寄付します」とか「今後の活動費に充てます」とか回答はいろいろ。一見微笑ましいやり取りですが、実はこの質問は、本来ならメディア以外にもっと熱心にヒアリングすべき人がいる内容です。

メダリストがもらう報奨金には2種類あります。

ひとつはJOCが支給する報奨金。こちらは金メダルに対して300万円、銀メダルに対して200万円、銅メダルに対して100万円が支給されます。メダル獲得ごとに支給されますので、スキー・ジャンプのレジェンド葛西紀明さんの場合、銀1個・銅1個で合計300万円となります。

そして、もうひとつが所属企業や競技団体などが支給する報奨金。たとえばフィギュアスケートの羽生結弦さんの場合、JOCからの金メダル報奨金300万円に加え、日本スケート連盟から報奨金300万円を別口でもらうとのことです。

この2種には大きな違いがあります。JOCからの報奨金は所得税法の特例で非課税となるお金で、JOC以外の競技団体などから支給される報奨金は一時所得扱いで税金がかかるお金であるということ。税額は総所得によって変わりますが、5%〜40%の税率が課されることになるお金なのです。

むむ、ちょっと面倒くさい感じですね。税金を払うこと自体は当然としても、確定申告しないといけない手間が発生するというのは。

しかも、用途によってはさらに手間感は増します。

たとえば、羽生さんは報奨金について、東日本大震災の被災地復興などに寄付したいとの考えを示しています。寄付による控除は、寄付した人の所得などにも影響されるのでハッキリと金額は決められませんが、控除によっておさめるべき税金はほとんどなくなると思われます。ただし、それも確定申告で控除を申請すればの話。申請しなければ、所得税を払って寄付もしてで、羽生さんのお金は大きくマイナスとなるのです。

もっと面倒なのが「仲間と山分けします」のパターン。仮に羽生さんがコレをやろうとした場合、合計600万円の報奨金のうちJOC以外からの300万円に所得税が発生した上で、さらに山分けした相手側に贈与税が発生します。「お世話になったコーチと300万円ずつわけます」ということが決まっているなら、JOC以外からの報奨金300万円は選手本人ではなく、コーチに直接支給したほうがトータルでの旨味はアップするわけです。手間は減りますし、手元に残るお金が増える可能性も高くなりますから。

どうせあげるお金なら、気持ちよくあげて、気持ちよくもらってほしいもの。

選手側の意向を踏まえ、税理士がついているなら相互協議し、なるべく選手側の手間・負担を軽減してあげること。金額自体のアップは景気によりけりでしょうが、「手間・負担」はあげる側が肩代わりしてあげられるはず。

「報奨金だけど、何に、いくら使うつもり?」

この質問は、メディアに個別に問われるより先に、あげる側の経理担当の方から熱心に問い合わせてあげてほしい。優勝賞金のように、渡す相手や額が最初から決まっているお金ではないのですから。確定申告の時期ということもありますし、こうした気遣いもまた選手へのサポートとなるのではないかと思うのです。

↓ちなみにロシアでは、金メダリストには報奨金に加えてメルセデスベンツの新車をあげるそうです!


Russia awards cars to its Olympic medalists

MOSCOW (AP) -- Russian Prime Minister Dmitry Medvedev has given a Mercedes-Benz to each Olympic medalist from the host country of the 2014 Sochi Games.

(参照:http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20140228p2g00m0dm018000c.html


15歳のリプニツカヤさんは免許取れない年齢ですけど、あげます!

17歳のソトニコワさんも免許取れない年齢ですけど、あげます!

運転手もセットであげます!

「あげたい側が、あげたいものを、あげたいようにあげる」という姿勢も、ここまでやるならアリなんですかね?

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/