2月12日、牛丼業界4位の「なか卯」が新たに発売した「牛すき丼」が、それまで好評だった「和風牛丼」を超える売れ行きを見せているという。実は『なか卯』だけではない。いま、牛丼業界では、こうした「牛丼依存」から脱しようとする動きが目立つ。その象徴として選ばれているメニューが「すき焼き」なのだ。

 先陣を切ったのは、老舗の『吉野家』だった。昨年12月5日、「牛すき鍋膳」と「牛チゲ鍋膳」を販売開始。その直前に開かれた戦略発表会では、<うまい・やすい・ごゆっくり>という新コンセプトに基づいたメニューだと発表。これまで譲ることのなかった<うまい・やすい・はやい>からの転換、つまりこちらも牛丼中心主義からの“離別”を強調したのである。

『吉野家』の「牛すき鍋膳」はお持ち帰り不可。加えて注文すると、店員から「少しお時間をいただきます」と一言添えられた。これまでの『吉野家』ではなかった言葉だ。待つこと5分、固形燃料を使った卓上コンロで、グツグツ煮え立つ鍋が運ばれてきた。

 山盛りになった「牛丼」よりやや厚めの肉、そして味の染み込んだ豆腐、白菜、白ネギ、玉葱、平打ち麺が入っている。これにご飯、生卵、漬物がセットで付いてくる。口にした瞬間「あ、アリだな」と頷く。急いでかきこまなくても、アツアツは続き、確かにいつもより「ごゆっくり」できる。

 並盛りで580円。「牛丼」よりも300円も高い、かなり強気の設定に思える。それでも来店した夜8時過ぎには、店内にいた7人の客のうち、4人が「牛すき鍋膳」を食べていた。『吉野家』企画本部広報担当の吉村康仙部長は、好調ぶりをアピールする。

「おかげさまで、発売2か月間で累計700万食を突破しました。販売目標は公表していませんが、想定以上に各店舗の数字が伸びており、かなりの手応えを感じています。すき焼きを導入したのは、常連のお客様から“落ち着いて食事をしたい”という声があったためです。そのニーズに応えられたことを、評価していただいた結果だと思っています」

『すき家』も追撃する。2月14日から、「牛すき鍋定食」など、鍋定食3商品の販売を開始した。値段もセット内容も『吉野家』と同じで、580円(並)。一見、『吉野家』の二番煎じ的な戦略にも見えてしまうが、『なか卯』・『すき家』を展開する、「ゼンショーホールディングス(HD)」広報室の廣谷直也氏は、“元祖”を主張する。

「もともと弊社の屋号の由来は『すき焼き』で、創業の翌年から『すき焼き定食』を販売していました。その後、このメニューは中止と復活を繰り返しながら来ましたが、昨年から再び復活するため準備を進めていたのです」

 確かに、店内のメニューにも「復活」の文字が躍っていた。

※週刊ポスト2014年3月7日号