米国株のおっかなびっくりの高値追い相場は債券から株式へと、大きく動きだしている証拠だ!
米国株市場は史上最高値を更新しては調整し、しばらくしてまた最高値を更新するの繰り返しで、ジリジリと下値を切り上げている。投資家も市場関係者も、いまいちガンガンの強気になりきれないでいる。そんな中、日本の株価だけがヨタヨタしながらも上値を追っているわけだ。だが、こういった展開は大きく育つ相場の典型的なパターンの前兆と言っていい。大いに歓迎だ!

しぶとく上値を追う米国株価の上昇相場は意外と大きなものになる

現状の米国株価は、おそらく米国経済の復活を見通しているのだろう。今はどの景気指標も「弱々しい回復ぶりを示している程度」といったところだが、株価はもうその先を行きたがっているようだ。

たとえば、シェールガスだ。米国は驚くほど安価なエネルギーを手に入れた。その結果、貿易赤字の大半を占める原油の輸入が大幅に減り、米国の貿易収支が劇的に改善するのも、今や時間の問題となった。同時に、安価なシェールガスを原材料にして、米国の化学産業が大復活する図式も見えてきた。実際、化学品メーカーによる大型工場の建設ラッシュが続いている。

この2つだけでも、米国の景気を大きく押し上げる要因となる。そこへ、株高による資産効果で、個人消費を高める傾向はますます強くなってきた。

したがって、2014年後半には米国景気の足どりも相当に強くなってくるだろう。それにつれて、今はおっかなびっくりの株高現象といったところだが、いずれ力強い上昇相場となっていくはずだ。

米国の景気回復が本格化すれば、ドル高基調が定着するだろう。それは日本からの対米輸出を量的にも価格競争力の面においても、大いに支援する材料となる。

米国の復活は、日本をはじめ多くの国々にとっても朗報だ。輸出関連株を中心に、相当な上値追いが期待できる。日本の場合、そこへ国内景気の回復も乗っかってくる。消費税率の5%から8%への引き上げで、「消費が落ち込む」といった懸念もあるが、それほど恐れなくともよい。

国内のあちこちで明るい雰囲気が高まってきており、その景気押し上げ効果は大きなものになるだろう。

21年ぶり、金利コストの上昇は金融界、産業界に大打撃を招くことになる

最近の新幹線や飛行機、そしてホテルの混雑ぶりは、バブル好景気のころを思い出すほどだ。よほど早めに予約しないと爛筌丱い〞という状況になりつつある。これらは、多くの企業の業績動向に間違いなくプラス材料となるはず。いずれ株価に反映されるのが目にみえるようだ。

株式投資にとっては、いろいろな面で好条件がそろいつつある。ひとつだけ懸念材料を挙げるならば、景気の本格回復に伴って金利も上昇に転じるということだろう。

景気回復による金利上昇の不可避性など織り込み済みのことで、われわれ長期投資家にとっては驚くに値しない。そんなものは、もう十分すぎるほど読み込んだポートフォリオを構築している。

ところが、日本全体で見ると金利上昇で大慌てする人が山ほどいるわけだ。とりわけ金融界には動揺が走るだろう。

1992年9月に日本が超低金利政策を導入して、21年がたつ。「金利は上がらない、ゼロ金利に近い状態が当たり前」という考えが固定化し、それをベースに金融をはじめ、多くのビジネスが動いてきた。

その典型が国債相場だろう。黒田日銀総裁による国債の大量買いもあって、10年物の長期債利回りが0・7%を切っている(2014年1月8日現在)。それを何とも思わない人々が大半だが、実はとんでもないことで、火薬庫の隣でタバコを吸っているようなものなのだ。

2014年中には黒田総裁が目指す2%の物価上昇はある程度見えてくるだろう。そのとき、長期債利回りだけが0・7%前後に止まっているなんて、ありえないこと。もし、そんな状況ならスタグフレーション(不況時の物価上昇)への突入で、安倍政権はさらなる景気浮揚策を講じなければならない。2%の物価上昇時に、長期債利回りは2%はおろか、3%台になっていてもおかしくはない。それが経済では普通のことなのだ。

国債の金利上昇は好都合。国債売りの株式買いで株価はV字回復となる!

しかし、その猊當〞が金融界や一部の産業界には大打撃となる。長期債利回りが跳ね上がっていけば、国債の価格は逆に値下がりするのだ。日銀を筆頭に銀行、生保、ゆうちょ、年金などが大きな評価損を抱え込むことになる。

それだけではない。多くの産業が21年ぶりに金利コストの上昇という事態に直面する。長いことゼロ金利に近い状態で商売をやってきたのに、2%、3%の金利コストを前提としたビジネスに切り替えなければならない。金融界や産業界が大混乱に陥るのは間違いないだろう。もっとも、長期金利がそのまま跳ね上がっていくことは考えにくい。政府や日銀が極端な金利上昇を阻止するために、あらゆる手を打ってくるはずだ。そんな過程を経て、長期金利の水準も2〜3%台で落ち着いてくると思われる。

株価全般では、金利上昇で一時的には急落するかもしれない。しかし、景気の腰も強くなり、国債売りの株式買いという動きも本格化する。それもあって、株価はV字型の回復となるだろう。

澤上篤人(ATSUTO SAWAKAMI)
さわかみ投信取締役会長

1947年、愛知県名古屋市生まれ。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。『5年後の日本をいま買う長期投資』(小社刊)、『今から長期投資を始めて2億円にしよう!』(主婦の友社)など著書多数。



この記事は「WEBネットマネー2014年3月号」に掲載されたものです。