1杯100円程度の煎れたてコンビニコーヒーが年間で億杯単位の大ヒットを飛ばす一方で、300円以上するスターバックスコーヒー(スタバ)の人気は相変わらず根強い。都内のスタバでは時間帯を問わず学生やサラリーマン、OLたちで賑わい、満席状態の光景も珍しくない。

 スタバの好調ぶりは数字にも表れている。スターバックスコーヒージャパンが2月6日に発表した2013年4〜12月期の業績によると、純利益は前年同期比21%増の53億円で第3四半期では過去最高を記録。このまま2014年3月期の経常利益も3期連続で過去最高を更新しそうな勢いだ。

 1971年に米国シアトル市のバイク・プレイス・マーケットに1号店をオープンさせたスタバ。いまや世界62か国で1万9000店舗を展開しているが、中でも最重要市場と位置付けられているのが日本だ。

 東京・銀座に初上陸を果たしたのが1996年。それから17年を経て、昨年9月にはついに1000店舗にまで膨れ上がった。志賀高原に期間限定でオープンした店舗が「国内最高(の標高)」と報じられたり、都道府県の中で唯一なかった鳥取県にも今年中には進出見込みだったりと、加速する出店の話題には事欠かない。

 しかし、景気回復の波に乗って外食の高額消費傾向は顕著になってきたとはいえ、日々のコーヒー代を考えると1杯300円は決して安くないはず。コーヒーチェーンの競合もひしめく日本で、息の長いスタバ人気の秘密は一体どこにあるのだろうか。

 フードコンサルタントでイエローズ代表の白根智彦氏が分析する。

「コーヒー1杯の価格だけでは計れない付加価値があることが大きい。それは同社が“パートナー”と呼ぶ従業員たちが、頻繁に行われる研修を通じておいしいコーヒーの作り方を熟知するだけでなく、笑顔でお客さんの目を見ながら接客するなど何気ない気遣いを学んでいることにも表れています。

 つまり、客の琴線に触れるおもてなしのサービスが居心地の良さを与え、リピーターを増やしているといえます」

 本国スタバのCEO(最高経営責任者)、ハワード・シュルツ氏はかつて全米の約7000店舗を一時閉店し、従業員たちに再教育を施したエピソードは有名だが、それだけ同社は時間とカネのかかる社員教育に惜しみなく経営資源を投入してきた。

 日本のスタバでは今年4月から約800人いる契約社員のすべてを正社員にする計画が持ち上がっている。店長クラスの正社員の数を大幅に増やすことで、より一層のサービス向上を目指すのだという。

「スタバの店舗は自宅、職場・学校に次ぐ第三の生活拠点、サードプレイスを提供する『空間づくり』を目指しています。だからオシャレな店内やソファ、個性あふれるタンブラーまで、上質な“スタバ文化”を演出し、お客さんは『スタバで仕事する自分がカッコイイ』などと憧れのライフスタイルを重ね合わせる。そんなコミュニティができあがっているのです」(前出・白根氏)

 最近では世田谷区の二子玉川や代沢など住宅街で、従来店舗よりさらに高価格店の「インスパイアード バイ スターバックス」を出店。通常より平均2割高いコーヒーやお酒の提供まで始めている。これも質やサービスの向上を掲げ続ける同社から見れば、十分に勝算があっての戦略なのだろう。

「シアトル系カフェ」でスタバのライバル、タリーズコーヒーも1杯800円のコーヒーをメニューに加えた新型店を都内にオープン。高価格カフェの戦いは火花を散らしているが、「店内のゆったり感や店員のサービスなどを考えると、タリーズよりスタバのほうが落ち着く」(40代男性)といった声が出るなど、総合力ではやはりスタバに一日の長がある。

 長らく続いた消費不況で、サービスコストを削減してでも価格で勝負してきた飲食業界。だが、スタバの勢いを見る限り、消費者は価格よりも新たな満足感を求め出しているようだ。