スノーボードのアルペン競技、女子のパラレル大回転で日本人初となる銀メダルを獲得した竹内智香は、「W杯も2位続きで最後の最後まで2位。うれしさ半分悔しさ半分というより、悔しさの方が大きいかもしれない」と語っていた。そして、大会最終日前日の22日にはパラレル回転に出場。こちらも予選を勝ち上がり、決勝トーナメントに進出した。

「私としては、天候の動きをみて、大回転の時のように冷え込んでアイスバーンになることを望んでいたのですが......」

 こう話す竹内は、大回転はW杯で3戦とも2位になっていたが、回転では結果を出せていなかった。それでも前日の練習では好感触を得て、この日は「完璧中の完璧な滑りをしたらベスト4に入るかな、という気持ちで試合に臨んだ」という。

 だが、天気は快晴になり、気温も高く雪は軟らかくなった。思惑が外れてしまったこともあり、大回転では予選1位通過だったが、回転は予選13位で通過。さらに、決勝ラウンド1回戦の1本目は赤コースよりも難しい青コースだったこともあり、中盤まで互角に戦いながらも最後の最後で離されて0秒20差をつけられた。

 しかし、2本目の赤コースは予選から好タイムを出す選手が多かったため、竹内にも逆転のチャンスは十分あった。時差スタートで前半はリードされながらも、中盤で相手に並びかける。だが、リードしかけた旗門を通過した直後に、横滑りして転倒してしまい、準々決勝進出はならなかった。

 敗れた対戦相手のスイス人選手は、竹内がスイスナショナルチームの練習に参加させてもらっていたころチームに入ってきた旧知の選手で、「仲良しで妹みたいな子」と言って竹内は笑う。

「今シーズンは回転の方がずっと調子が乗ってこなかったので、予選から1回戦、2回戦と一本ずつ戦っていこうと思っていました。でも最後は、攻め過ぎて失敗しましたね」

 竹内はサッパリした顔でこう言った。大回転の板は早めに決定していたのに対し、回転の板は昨年の10月になってやっと決まるなど、「対策が遅れていた」という。練習でも回転は板のテストに費やす時間が多かった。

「練習は大回転と回転を半々でやっていましたけど、板の決まっている大回転では攻める練習ができても、回転はテストのため、攻めの滑りではなく、データを取るためのコンスタントな滑りしかできなかったんです。大回転の板は07年から11年まで開発を続けていた実績もあったのですが、回転の方はソチでの実施決定が遅かったこともあって、そこの差が今シーズンの結果にもなっているのだと思います」

 こう話す竹内は、日本ではまだ歴史の浅いアルペンスノーボードで、日本人がまったく勝てないころからキャリアをスタートした選手だ。

「競技を始めてから18年間、スイス代表チームに入れてもらったり、自分からコーチの指導を申し込んだりしてやってきましたけど、世界のトップに来るまですごい時間がかかった......。今回は本当に勝てるチャンスだと思っていました。4年後はどうなっているかわからないから、絶対に(メダルを)手に入れたいと思っていました」

 その執念が大回転での銀メダル獲得につながったといえる。竹内は「今回メダルを獲ったことで、アルペンスノーボードが、他のメジャーな競技と同じように、5年後、10年後にもっと注目してもらえるようになれば大満足です」と話す。

 回転が終わった翌日、ジャパンハウスでのメダリスト会見に出席した竹内は、「大回転ではW杯と同じミスをして最後に敗れてしまったのが悔しかった。でも、メダルセレモニーで銀メダルをもらってからは、支えてくれたスタッフや応援してくれた人たちの笑顔を見ることができました。日本のいい時間帯にテレビ放映があり多くの人たちにアルペンスボーボードのことを知ってもらえたと思うと、大きな喜びを感じる」と今の心境を吐露した。

 フェリックス・スタドラーコーチやスタッフとの今後の契約は、ソチだけを目指してやってきていたこともあり、まだ白紙の状態だ。この後、スタッフで話し合いをして方針を決めるが、これまでの4年間と同じような競技環境が整わなければ現役を退くことも考えているという。

「この4年間でどういう環境で過ごして、どういうことをやってくれば勝てるようになるかというのがわかったので、そういう環境が整うようなら4年後を目指したいと思うし、今以上のことができないようであれば辞めると思います。後輩を育てるための力になりたいと思っているから、競技を続けて次の世代に引き継いでもらいたいという気持ちもある。だけど、中途半端に続けることは応援してくれる人やスポンサーに対しても良くないので、やるなら本気でやる、やらないならやらないとハッキリ決めたいです」

 育成については「私は気が長くないからコーチに向いていない(笑)」と言い、自分が経験してきた練習環境を次の世代に引き継げるようなサポート役を務めたいと考えている。

 自ら用具の開発をするなど、高いレベルで戦うための環境を求めてきた竹内は、銀メダル獲得でひとつの目標を果たした。この先、どのようなステージに向かうべきか、その視線は次の地平を見据えている。

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi