会場入口にて、今まさに数理モデルを書き出している。『ガリレオ』みたい!

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ビートたけしの、こんな発言をご存じだろうか? 

「数学というものは哲学であって、全ての事象は数学に支配されており数学で説明できる」

全ての事象に対し、勘、フィーリング、もしくは何も考えないで対応している自分には異世界の話だな……。

しかし、そんな私の人生観が変わってしまいそうな機会に遭遇! 日本科学未来館では、「1たす1が2じゃない世界―数理モデルのすすめ」なる企画を期間限定(2月19日〜9月1日)で開催するそうです。

同展でも、やはり「世の中で起こっているさまざまな現象は数学的に表すことができる」と説明してくれてます。そして、数学的に表されたものを「数理モデル」と呼ぶらしい。しかも、これらの現象のほとんどは“1+1=2”で表される単純なものではないようです。

難しい話になってきましたね? しかし、今回の展示では例を挙げてわかりやすく解説してくれるので、文系の私でも普通に興味を持つことができました。例えば、シマウマの模様。あれって、数理モデルで表すことができるらしいんです。計算の成り立たない世界かと思いきや。この手の事例、挙げていくだけでも面白い。例えば、カエルの鳴き声。一匹一匹がバラバラに鳴いてるはずが、いつしか全体としてリズムが心地良くなっていき、次第に“カエルの合唱”と化していきますよね。これも、数学で表せるそう。

それだけじゃない。人間の“流行”でさえ、数理モデルで説明できる。もちろん、そこには性別だったり、地域性だったり、それこそ人間性だったり、さまざまな要素が作用します。でも、なんとそれらさえも数学的に説明できてしまうとのこと。まさに、「1たす1が2じゃない世界」!

そんな今回の展示では、7つのミッションが用意されています。では、その中で特に印象的だったものをご紹介していきましょう。

特にお子さんに注目していただきたいのは、「脳を解明せよ」なるミッション。ここでは、あるシミュレーションに挑戦してもらいます。それは「平和な動物園をつくろう」なるパズル問題。計10種類(ライオン、ヘビ、インコなど)の動物が用意されており、これらをどの場所の檻に住ませるか4分以内に判断します。でも、それぞれの動物には相性がある。ライオンとヘビの相性は最悪だけど、インコとパンダの相性は最高。これらのデータを基に、それぞれの動物の位置関係を調整。相性の良い動物を近くに、悪い動物を遠くに置いてあげると、“平和な動物園”が完成するわけです。

これ、難しいと思いません? なぜなら動物の数が少し増えるだけで、組み合わせの数が爆発的に増えてしまうから。全組み合わせを考慮してベストな答えを出そうとすると、計算にとても時間がかかってしまう。もし動物が20匹に増えると、なんと約24京通りにまで達してしまいます。でも人間って、こんな問題でも直感的にささっと答えを出せてしまう。必ずしもベストな答えじゃないけど、そこそこ満足できるアンサーを出せる。いつも同じ答えじゃないから不安定に見えるけど、この振る舞いこそが人間の複雑な脳の特性なのです。

「投薬のスケジュールを組み立てよ」というミッションも、興味深い。近年、「前立腺がん」の患者が急激に増えているらしい。薬でがん細胞の増加を抑えるのですが、投薬を続けていると次第に薬が効きにくくなります。そのため、投薬の中断と再開を繰り返す治療法が提案されています。しかし、がん細胞の増減には個人差がある。全ての患者に万能な処方箋は存在しないのです。このような場合にも、数理モデルは有効。投薬時と中断時のがん細胞の変化を汎用的な数理モデルで記述。このモデルを患者個人の適性に合うよう調整することで、最適なスケジュールを組み立てられます。そして、この理論を基に投薬と中断のタイミングを調整するシミュレーションもここでは体験できます。

「病気の予兆を見極めよ」なるミッションでも、数理モデルは活躍。ここでは、体内の遺伝子活動を手がかりに病気の予兆を見極めます。遺伝子の中には、発病の前に同じようにゆらいで病気の予兆を知らせる特定のグループがあるらしい。そこで、ここでは外環境のわずかなノイズで活動を始めたり収めたりする不安定な遺伝子群を探し出すシミュレーションを体験します。その際に活躍するのは、数理モデルを反映したグラス。これを通して体内を観察すると、妙な活動を始める遺伝子がわかりやすくなるんです。その動きを察知したら、ボタンを押していただきたい。成功だったら、すなわち早期発見できた! ということです。

最後に紹介する「ホタルとシンクロせよ」ミッションは、非常に幻想的。例えば「一人ひとりがバラバラにふるまっていたはずが、気がつくと同じリズムで行動していた」って、よくあるじゃないですか? こうした同期現象は、ホタルの集団発光でも見られます。この仕組みを、ホタルを模した電子回路で解明します。台の上には光り方や光る速さの異なる数種類のLEDホタルが。LEDホタルには、周りの光を感じる部分(センサー)と、自分が光る部分(LED)があります。ではLEDホタル同士を近付け、しばらく観察してください。すると、LEDホタル同士が同時に光ったり消えたりし始めるから。いろんな並べ方を試し同期実験を楽しむと、楽しいし賢くなる!

『ガリレオ』の湯川准教授(福山雅治)が、黒板に数式をダーッと書き出すシーンがありますよね。何の数式かさっぱり分かりませんでしたが、要するに今回の企画みたいなことに取り組んでるのだそう。

「世の中で起こっているさまざまな現象は数学的に表すことができる」、なるほどです!
(寺西ジャジューカ)