石原直樹、彼もまた森保監督の戦術に欠かせない選手だ<br>(Photo by PHOTO KISHIMOTO)

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「出さなきゃ負けよ……」はジャンケンの掛け声だが、サッカーにも同じようなところがある。センターバックをゴール前から引きずり出すのは、ゴールへの重要なアクセス方法だ。

 もっとも、センターバックをおびき出すのは絶対条件でもない。外へ出るべきか、ゴール前へステイすべきかの判断に迷いを生じさせれば、決定的なシーンを作り出すことはできる。

 たとえば、2月22日に行われたサンフレッチェ広島対横浜F・マリノスのゼロックススーパーカップで、こんなシーンがあった。後半開始直後に、サンフレッチェの石原直樹が右サイドでパスを受けた。一発のターンで相手のマークを外した彼は、フリーで前を向く。

 ここからの駆け引きがめまぐるしい。

 中央へパスを出すタイミングを担保しつつも、石原はそのままドリブルで持ち込んだ。ペナルティエリア内へ侵入していった。

 F・マリノスのセンターバック中澤佑二は、難しい判断を迫られた。石原との間合い一気に詰めようとしたら、ゴール前の佐藤寿人をフリーにしてしまう。石原がペナルティエリア内へ侵入してくるにもかかわらず、中澤はゴール前から出られない。クロスのコースを限定しつつ、佐藤寿との距離を保つことを選ばざるを得なかった。
 
 結果的に中澤は、クロスをカットすることも、シュートを打たせないこともかなわなかった。センターバックからすると、どうにも対応しきれないシーンだった。

 この試合のサンフレッチェは、野津田岳人と浅野拓磨のゴールでF・マリノスを下した。この19歳コンビの活躍は頼もしいかぎりで、佐藤寿も持ち前の抜け目なさを発揮していた。

 そして石原の存在もまた、相手守備陣にストレスを与えていた。献身的なまでのディフェンスも含めて、彼は森保一監督の戦術に欠かせない選手と言っていい。リーグ開幕戦でぶつかるセレッソ大阪の守備陣は、どのような対応を見せるのか。サンフレッチェの背番号9を中心とした攻防は、ひとつのポイントになるはずだ。