どこからでも寄せてくるデュビッソンの技に驚きを含んだ笑顔を見せるデイ 最終マッチの印象的なシーンだ(Photo by Stan BadzPGA TOUR)

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 アクセンチュア・マッチプレー選手権の決勝マッチを眺めながら、凄い選手は世界のあちらこちらから出てくるものだと痛感させられた。
J・デイ、23ホール激闘の末マッチプレー制覇!ファウラーが3位
 優勝したオーストラリアのジェイソン・デイは、すでに米ツアーで勝利を挙げ、マスターズでは2度も優勝争いを演じた選手ゆえ、彼が凄い選手であることは、すでに周知の事実だった。けれど、そのデイを相手に23ホールも渡り合ったフランスのビクター・デュビッソンが、これほど凄い選手であることは、今大会で初めて世界に知れ渡った。
 グリーン周りのどんな場所からでも絶妙に寄せ、グリーン上では難しいラインをポンポン沈めるデュビッソンの手は、欧州ツアーでは「ゴールデンハンド」と呼ばれているそうだ。デイと戦った決勝マッチでも、ゴールデンハンドは何度も光り輝いた。
 デイに3ダウンを喫して迎えた後半で、デュビッソンは13番、17番、18番を奪い返し、オールスクエアへ。その過程でもゴールデンハンドの威力は随所で垣間見ることができたが、ゴールデンハンドの本当の出番は、その先の延長マッチで訪れた。
 19ホール目。グリーンをオーバーした第2打はサボテンや草、石もゴロゴロしていた砂地に止まった。ボールのすぐそばにはテレビケーブルも横たわっていた。が、デュビッソンはルール委員を呼ぶこともなく、サボテンも石もケーブルも一切合財、吹き飛ばすような、そんな打ち方で、ピン1.5メートルへ見事に寄せた。
 20ホール目。またしても砂地に入った。今度は茎の固そうな植物が横向きに生えたり横たわったりしているその下にボールが止まってしまった。が、デュビッソンはここでも黙ってウエッジを握り、物言わず、周囲の誰にも有無を言わさぬという表情で、何の迷いもないかのごとくウエッジをドスンと打ち込み、ピン2メートルへ見事に寄せた。
 デイが思わず苦笑してしまうほど、ゴールデンハンドはアッパレだった。大型新人の登場だな。誰もがそう思った2ホールだった。
 デュビッソンは、まだ23歳の若さだ。タイガー・ウッズに憧れて12歳でゴルフを始め、2009年には欧州アマを制し、アマチュアランク世界一になった。その翌年にプロ転向し、11年から欧州ツアーにデビュー。以来、着実な向上を見せ、昨秋のトルコ航空オープンで初優勝を挙げ、一気に世界ランクをアップさせて今大会初出場となった。
 デュビッソンの武器はゴールデンハンド。初出場でキャリアも浅いデュビッソンにマッチプレーをどう戦うという作戦は無かった。決勝進出を決めた直後も彼はこう言った。「ただただ自分のプレーに集中するだけ」
 それならば、デイには作戦があったのか、デイの武器は何だったのかと考えてみた。
 デイは今大会4度目の出場で、昨年は準決勝で敗れ、3位になった。つまり、デイにはデュビッソン以上に経験がある。そのぶん、マッチプレーの戦い方、勝ち方を知っていると言えないことはない。が、だからと言って、ほんの数回多くこの大会に出たという経験が、どこまで役に立ったのかと問われたら、それも何とも言えないだろう。
 経験を生かし、作戦を立ててみたところで、マッチプレーは相手のある戦いゆえ、相手次第で状況は刻々と変化していく。作戦通りになど、いかないことのほうが多い。詰まる所、マッチプレーは出たとこ勝負だ。そして、シーソーゲームになればなるほど、攻めるよりも、相手のミスをじっと待つ戦いになる。
 そう、最後は精神戦、持久戦。技術力は大前提となる力であって、最後の最後の究極の場面でモノを言うのは、技術力ではなく精神力と持久力だ。
 勝敗が決した23ホール目。デュビッソンのボールはグリーン右手前のラフに沈んでいたが、サボテンや石ころをモノともせずに打ち出して寄せるあのゴールデンハンドを持ってすれば、そのラフからピンに寄せることはできそうだった。デュビッソン自身、ゴールデンハンドでピンに寄せるつもりで攻めた。
 だが、究極の場面でゴールデンハンドは、ついに狂った。ピッチ気味のショットは強すぎてピンを6メートルほどオーバー。
 そのミス、そういうミスがデュビッソンから出るときを、デイはじっと待っていたのだ。デュビッソンが寄せ損なうと、デイは冷静に80センチへ寄せ、バーディーパットを沈めて勝利を掴んだ。
 「長い一日だった。どれだけ勝ちたいと思ったか、どれほど勝ちたかったか……」
 長丁場を渡り終え、勝利を掴んだデイの言葉は、勝利への渇望と忍耐こそが自らの究極の武器となったことを物語っていた。
 「ビクターはすごいガッツの持ち主。そして、ショートゲームがうまい選手だね」と敗者を讃えた上で、デイはこう付け加えた。「こんなに長い戦いになるとは思っていなかったけど、今、本当に良かったなあと思えることは、最終日の優勝争いの本当のプレッシャー、本当のドキドキ感、心臓の高鳴りを経験し、それを乗り越えられたことだ」
 そう、最後は、技術じゃない、作戦じゃない。最後は、メンタル。最後は精神戦。
そこに自信が持てたことが「マスターズに、今後のメジャーに生きてくる」。それが一番うれしいのだと、勝者デイは言った。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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