■ディエゴ・フォルランの獲得で主役に躍り出たC大阪

いよいよ開幕も迫ってきたJリーグ。今週末にはシーズンの前哨戦と言うべき富士ゼロックススーパーカップ(広島vs横浜FM)が行われ、その翌週からはJ1・J2両リーグの幕が開けることとなる。

今回は各クラブの補強もほぼ終わり、体制も固まりつつある現時点で、J1各クラブの戦力を概観してみたい。度肝を抜く大型補強をしたクラブがあれば、手堅く渋い選手を集めて戦力を増強したクラブもあり、一方で不安ばかりが募るようなクラブもある。

まずはウルグアイ代表FWディエゴ・フォルランの獲得でストーブリーグの主役となったC大阪だ。フォルランだけでなく、豪州代表MFミッチ・ニコルスの獲得にも成功。さらに原稿執筆時点ではまだ正式発表がないものの、ハンブルガーSVの元セルビア代表MFで、CBもこなせるカチャルの獲得も濃厚となっている。

フォルランは大ベテランだが、ニコルスは24歳、カチャルは27歳とまさに働き盛り。脇を固める人材としては申し分ないタレントと言えるだろう。また、最前線では移籍濃厚と見られていたFW杉本健勇が残留。さらにFC東京からMF長谷川・アーリア・ジャスールが加わり、複数ポジションをこなす安藤淳の加入で後方の層も厚くなった。安藤が故障で出遅れてしまったのはマイナス要素とはいえ、シンプリシオを失って懸念されていた穴は総じて埋まった感がある。

あとはランコ・ポポヴィッチ新監督次第といったところだろう。FC東京では「勝てる監督」というイメージを残せなかったが、このC大阪では柿谷曜一朗とフォルランという絶対的な前線の軸のいるチームをどう料理するか。あらためてその手腕に注目が集まるところだ。もっとも、このチームにとって最大の懸念材料は6月にある。欧州移籍のウワサされる選手は柿谷に加え、MF山口蛍、扇原貴宏、そして杉本と善くも悪くも“揃っている”。

若手のホープ・南野拓実も、いつ欧州から声の掛かってもおかしくない選手だ。そして言うまでもなくフォルランにしてもW杯で「やれる」ところを示すようなら、ビッグオファーが舞い込んでも何ら不思議ではない。“獲りすぎ感”のある補強も、夏の流出まで想定していると思えば、それほどではないだろう。この夏でもポポヴィッチ監督の手腕があらためて問われることになる。

■昨季王者・広島は堅実な補強

そのC大阪と開幕戦でぶつかる広島は、地味ながら堅調というこのクラブらしい補強を実施した。2、3シーズン先まで意識しているのも、このクラブらしさ。左ウイングバックとして甲府より獲得した柏好文は負傷で出遅れたが、シーズンの中では貴重な存在となるはず。

徳島より獲得のMF柴崎晃誠は、代役不在のMF森崎和幸のバックアップ、あるいは「後任」として期待が掛かるところ。絶対的守護神・西川周作を失った穴には仙台から林卓人を獲得。かつて新人として過ごしたクラブに帰ってくるという珍しい形での補強となった。西川のようなビルドアップは期待できないが、セービングに関しては同格。十分な期待値がある。

その西川の行き先となった浦和は、昨季のメンバーを踏襲して戦うシーズンとなりそうだ。フィールダーの10人に関しては開幕時の先発布陣にも変化はない見込み。その中で、新顔として台頭する可能性があるとすれば、元日本代表FW李忠成か。興梠慎三との争いになるが、割って入るだけの地力はもちろんある。まずは衰えた試合感覚を回復させつつ、レギュラーを狙うことになる。同市のライバル・大宮から補強したボランチの青木拓矢も故障の影響もあってレギュラー争いに食い込む気配はない。

浦和に中盤の要石を奪われた大宮は、激動のシーズンを経て“大熊アルディージャ”としてのファーストシーズンを迎える。ノヴァコヴィッチが出て行ってしまったが、実質的な交換で清水からラドンチッチを獲得。4-2-3-1システムで戦うことと、ズラタンがいることを思えば、たとえラドンチッチがフィットしなかった場合もそこまで大きなダメージはなさそうだ。

トップ下として攻撃の全権を担う家長昭博だけでなく、得点力のあるサイドハーフとして交代出場含めて期待されるMF泉澤仁(阪南大)の新加入も地味に大きい。穴となりそうなのはむしろ、下平匠の抜けた左SB。締め切り時点で有力な補強はなく、昨季の右SB主軸だった今井智基、あるいはFC東京から加入の中村北斗の“転属”でしのぐしかないか。

■残留争いの激化は確実

その下平が移籍した昨季2位・横浜FMは、完全な継続型でチームを構成した。マルキーニョスの抜けた1トップは、川崎Fから加入の矢島卓郎の起用が有力。スコアリング能力では見劣りする印象もあるが、ひとまず穴は埋めた。継続型のチームにあっては名古屋から加入の元日本代表のMF藤本淳吾といえども、なかなか定位置奪取は簡単ではなさそう。一方、ドゥトラが出遅れていることもあり、下平は先発もありそうだ。総じて層が薄いという昨季からの弱点は、藤本と下平、そしてMF三門雄大の加入で緩和された。懸念はやはり、1トップか。

矢島の抜けた川崎Fだが、補強面でネガティブな要素はなし。守備の強いMFパウリーニョの加入は地味に大きく、大卒ルーキー谷口彰悟(筑波大)の新加入で層も厚くなった。神戸もビッグな補強をしたチームでFWペドロ・ジュニオール、マルキーニョス、そしてMFシンプリシオと日本での実績がある助っ人をガッチリ捕まえた。経験のあるDF増川隆洋と合わせてJ1仕様へチームを組み替えた形になる。同じく昇格組のG大阪はGK東口順昭の獲得が大きい。遠藤保仁を前線に置くシステムは変わらず、今季のダークホース的存在となりそうだ。レアンドロ獲得で“ダブル・レアンドロ”が形成され、韓国代表MFハン・グギョンの加入でボランチの層も厚くなった柏も有力な優勝候補と言える。

一方、陣容が苦しそうなのが鹿島と名古屋、そして仙台か。鹿島は左SBとして獲得した山本脩斗が負傷し、CBの昌子源を左に回してしのぐなど、どうにも噛み合っていない印象がある。大迫勇也の抜けた最前線は“ダヴィ頼み”となりそうで、それをルーキーの赤崎秀平(筑波大)がどこまで埋められるか。主力を大量放出し、西野朗新監督の下で出直しとなった名古屋は福岡大の大型DF大武峻を特別指定選手として“補強”することが濃厚となるなど、守備陣の層の薄さはいかんともし難い。仙台はアーノルド新監督の手腕が未知数な中、GKの林を失った影響がどう出るか。新加入のMFマグリンチィの出来が隠れたキーとなりそう。

ただでさえ世界一予想が困難ではないかと思われるJ1リーグだが、今季は目立って「弱そう」なクラブもなく、残留争いの激化は確実。近年、上位候補と目されていたような予算規模の大きいクラブが降格していく流れが続いているが、今季もそうなる可能性は十分にある。どのクラブにとっても油断は大敵と言えるだろう。シーズン前だけでなく、選手の欧州流出を含めた“夏のストーブリーグ”も大きなポイントとなりそうだ。

■著者プロフィール
川端暁彦
1979年8月7日生まれ、 大分県出身。元「エル・ゴラッソ」編集長。現在はフリーとして活動。