“Start your day with a good breakfast together”
(おいしい朝ご飯から1日を始めよう)

先日、フォトグラファーのイージュン・リャオが ”実験的な恋愛関係”と題し、異性愛者の中に存在する男らしさと女らしさを反転させるという、何ともエキセントリックな作品を発表した。

年下男性との交際で目覚めた“秘めたるパワー”

どんな女性でも一度は憧れる年上男性。リャオも自分を守ってくれる、頼れる年上の男性としか恋愛はできないと思っていた。しかし、実際に彼女が出会ったのは5歳年下のモロだった。リャオは彼に出会って人生観が180度変わったと話す。 年下の彼と付き合うことで、今まで年上男性との関係では許されなかった自分の秘めたるパワーと権力を手にしたのだ。

彼はオモチャ

付き合い始めてすぐ、リャオは彼氏を題材にして数枚の作品を撮る。その作品で、リャオは彼をバスタブで殺してみたり、裸にさせてスーツケースから出て来させてみたりと、年下のモロを完全にオモチャのように扱った。リャオはその作品の出来にとても満足していたが、クラスメイトや教師の反応は期待外れのものだった。「なんで彼氏にそんなことができるの?!」「どうして女性側が男性側を服従させているの?」しかし、リャオは彼らの意見が「男女間の恋愛はこうであるべき」という“常識”に囚われたものだと感じたのである。

「男らしさ」「女らしさ」にコントロールされた世界

男性が男らしさを駆使して男女の関係の舵取りをしている一方 で、女性は女性らしさを使って何でも屋になり、その男の色に染まる。そして、男性中心の関係が成立する。それは女性の服装、髪型、身振り手振り、行動、話し方、全てに影響を与え、女性たちを変えていく。女性が権力を持つ関係性は稀であるのだ。そういった現状から、リャオは作品中で彼氏を服従させ、裸にさせる。

わたしの彼氏になるのに、男でいる必要はない

「わたしの彼氏になるのに、男でいる必要はない」と題された作品からは、彼女の恋愛に対する信念が伝わって来る。そもそも恋人同士に男女も何も関係ないのだ。「ベストな関係というのは、お互いが惹かれ合った時に最善の形で現れる。そして、それは時に性別を越える」とリャオは語る。

“You don’t have to be a boy to be my boyfriend”
(わたしの彼氏になるのに、男でいる必要はない”)

“How to build a relationship with layered meanings”
(重なり合う意味と恋人同士になる方法)

“Creating a world just for us”
(わたし達のためだけの世界)

“Mind-control is a woman’s essential skill”
(マインドコントロールは女性の必要最低限のスキル)

“Home-made Sush”
(ホームメイド寿司)

“Concave vs Convex”
(凸凹)

変わっていく男女の関係

アジアにおける男女の恋愛の役割は、わざわざ説明するまでもないほど明確である。特に異性愛者の男性はパワーと権力を握らなければならない。それとは逆に女性は儚さ、従順さ、繊細さなどが要求される。そして、彼の手の平サイズの女でなければならない。日本の男性も女性もそのステレオタイプに気付いていながら、そこから抜け出せないように思う。

まだまだ女性の力が弱いアジア圏で、男性中心の関係性に疑問を持ち、そしてそれをアートとして作品化してしまった彼女は本当のフェミニストと呼べるだろう。このようなアートをきっかけにして女性の目線に変化が産まれ、今後の男女関係が少しずつ変わっていくのかもしれない。

(文=Miho Namba)

引用元:Couple’s Gender-Bending Photo Series Challenges Our View Of Traditional Relationships