アメリカ連邦捜査局、通称FBI。現在公開中の映画『アメリカン・ハッスル』や、ドラマ『Xファイル』などで描かれている組織であるだけに、日本人にも身近に感じられるかもしれません。

映画で描かれているような"犯罪者を逮捕する警察部隊"とのイメージする人も多いかもしれませんが、その実態はかなり異なると明かしている書籍が『FBI秘録 その誕生から今日まで』です。著者は元ニューヨーク・タイムズ記者のティム・ワイナー氏。前作『CIA秘録』でCIA(アメリカ合衆国中央情報局)を解剖したピューリッツァー賞受賞ジャーナリストです。

ワイナー氏によれば、FBIの主要任務はテロリストとスパイに対する秘密諜報。1908年に司法省内に設立された当初から、共産主義やテロリズム、スパイ、無政府主義者、暗殺者らから国家を守るべく、情報戦を繰り広げてきました。

「秘密捜査官は違反常習者かもしれない。かれらの慣習には電話傍受、盗み聴き、不法侵入(押し込み)が含まれるからだ。何十年にもわたってFBIは、法律を曲げたり破ったりすることによって国家安全保障のために最高度の職務を果たしてきた。秘密警察は民主主義社会では呪詛の的である。だが米国においては、その権限からすればFBIがそれにもっとも近い存在なのである」

長年にわたり、その中心を担ったのがFBI初代長官を務めたジョン・エドガー・フーヴァー。1924年に就任すると、亡くなる1972年まで長官としてFBIを指揮しました。驚かされるのが、想像もできないような秘密任務を、当時から行ってきたということ。冷戦期のソヴィエトおよび中国の指導者に対しての直接的なスパイ活動や、ニューヨークおよびワシントンに対する自爆テロの把握、外国指導者を倒そうとするCIAがらみのクーデターの押さえ込みなど、国家を揺るがすような事件を未然に防ぎつつ、複数の大統領の失脚を密かに狙っていました。

民主主義国家としてのアメリカを守ることを使命とし、CIAとの縄張り争い、歴代大統領との調和と対立、KKK、米国共産党、アルカイダ、オサマ・ビンラディンらの「敵」との攻防を繰り返してきたFBI。本書は、匿名の情報源や推論ではなく、フーヴァー長官の諜報ファイルを集めたファイルを含む、最近機密扱いを解除された7万ページ以上の記録をもとにその歩みをたどりつつ、民主主義を守る「世界最高の諜報機関」の葛藤や矛盾を描いています。



『FBI秘録 上 その誕生から今日まで』
 著者:ティム ワイナー
 出版社:文藝春秋
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