2013年は新発債が増加!なぜ今、社債が注目されているのか
株式相場の値動きが激しい中、長期金利に対する先高観と投資家への裾野を広げたい企業の間で、個人向け社債の発行意欲が高まりつつある。一方、個人投資家は社債を選択肢のひとつと考えているようだ。運用先としての社債への関心を高めている。

今回のブームは、既発債や借入金の借り換えが要因

2009年以来の社債発行ブームはなぜ起こったのだろう?

金融アナリストの久保田博幸さんは、「前回は2009〜2010年に起債ブームが起こりました。このときは、金融危機による手元流動資金の逼迫が理由です。金融機関が劣後債などを発行したケースが多く見られました」と指摘。

「今回はアベノミクスによる金利先高観から、企業が2009年に発行した社債を借り換える目的で起債した例も多いようです。また、低金利で長期の資金を確保できれば財務の改善にも役立ちます」(前川貢さん)というニーズがあるようだ。つまり、従来起債している債券や借入金の借り換えニーズが発行ブームとなった第一の理由というわけ。

もちろん、景気回復に伴う資金需要もある。トヨタ自動車の場合、発行した600億円を次世代環境車の開発に振り向けるほか、花王もアジアなど世界市場の開拓に向けての攻めの投資資金として起債したという。

もともとメンテナンスなど旺盛な資金需要があり、定期的に社債を発行している企業もある。その代表例が、東日本大震災以来起債が止まっていた電力・ガス業界。狹杜郎〞という言葉があるほど、個人向け社債の中心的在存だ。今年になって、徐々に起債を再開したことも相対的な発行額増加に寄与した。NTTなどの通信業界、小田急電鉄、近畿日本鉄道、東武鉄道などの電鉄業界も同じ事情で常連だ。

発行額が膨らみ、個人向けも活発化したというのが2013年の個人向け債券市場の状況だ。ただ、定期預金に比べれば利率は高いとはいえ(下の表参照)、「2013年の発行条件は企業に有利なものでしたが、個人の運用対象としてはお勧めできるものではありませんでした」と前川さん。確かに5年で年率1%を超えている債券はほとんどないうえ、7年、10年と長期債の発行も多かった。決してもろ手を挙げて購入する条件ではなかったともいえる。

●主な社債と定期預金との金利比較

3年定期:0.03%(税引き前)
トヨタ自動車(3年):0.289%
5年定期:0.03%(税引き前)
ソニー(5年):0.86%
7年定期:0.04%(税引き前)
IHI(7年):1.11%

※2014年1月8日現在。定期預金はメガバンクで300万円未満の場合で、税引き前。社債は2013年発行の個人向け社債から抜粋。トヨタ自動車は約9.6倍、ソニーは28.6倍、IHIは約28倍に。

社債が発行される理由

1.研究開発や新規分野への進出など、資金需要に合わせて発行。
2.過去に発行した債券や金融機関からの借り入れを“借り換える”ために発行。
3.常に一定の資金需要があり定期的に発行。

前川 貢
前川FP事務所アドバンス代表

1961年、東京都生まれ。大和証券に入社し、主に債券部門に従事。2003年、独立。 著書に『いま債券投資が面白い』(近代セールス社)、『あなたの投資信託選びは間違ってないか』(日本経済新聞出版社)など。


久保田博幸
金融アナリスト

1958年、神奈川県生まれ。証券会社で国債を中心とする債券ディーリング業務に従事。日本アナリスト協会検定会員。著書に『最新債券の基本とカラクリがよーくわかる本』(秀和システム)など。



この記事は「WEBネットマネー2014年3月号」に掲載されたものです。