2月20日から(23日まで)タイ・パタヤビーチのサイアムCCで、米女子ツアーのホンダLPGAタイランドが開催される。昨季、同ツアーに本格参戦を果たした有村智恵の、2年目のシーズンがそこから始まる――。

 日本女子ツアー通算13勝の実績を掲げて、有村が挑んだ米女子ツアー。1年目は、20試合に出場して賞金ランキング61位に終わった。シード権獲得(80位以内)という最低限の目標は達成したものの、決して満足のいく数字ではなかった。

 有村がまず直面したのは、パッティングの不調だった。日本とは質の違う芝に戸惑ったのか、短いパットさえ決まらないことも多かった。そして、数試合消化した際、「ショットはいいのに、パットが入らない。ショットに悪い影響を与えないうちに、なんとかパットの調子を取り戻したい」と不安を漏らすと、はたしてその悪い予感が的中してしまった。

 パットが入らないから、ショットでピンに寄せたい。ピンに寄せたいから、飛距離を伸ばしたい......。そんな欲求を満たそうとして、自分本来のプレイの形を崩してしまったのだ。おかげで、自慢のショットのリズムまで崩すという悪循環にはまって、予選落ちを繰り返した。

 その後も厳しいシーズンが続いた。一度狂った歯車が戻ることはなかった。生真面目な有村は、ほぼゴルフ漬けの毎日を送ってきたが、結局シーズン終盤まで、自分のリズムを取り戻すことができず、日本では考えられないほどの予選落ちを喫し、予選通過を果たしても下位に沈んだ。

「1年目だから、出場する試合のコースをほとんど知らない。だから毎週、月曜日に移動したら、すぐにコースに出ていた。練習する環境も整っているから、ずっと続けてしまって......。もっとこうしなきゃ、ああしなきゃ、と考え過ぎて、どんどん変な方向にいってしまいましたね」

 シーズンを終えたあと、有村はそう振り返って苦笑した。ただ、厳しい状況の中でも、優勝争いに加わることもあった。5月のショップライト・クラシック(5位タイ)、6月のアーカンソー選手権(7位タイ)では、最終日最終組で回って、米ツアー初勝利に手が届くところにいた。

「あの2試合は、ともに"飛距離が必要ではないコース"という共通点がありました。ああいうコースなら戦える。でも、優勝争いをしても、どうしても優勝には届かなかった。この差を埋めるにはどうしたらいいのか、ずっと悩んできました。徐々にでもいいから、『自分のゴルフのスタイルはこうだから』と開き直れるようになれればいいな、と思っていました。あとは、小技ですね。いろいろな種類の芝にも対応できるように、もっと多彩な技術が必要です」

 とはいえ、米女子ツアー1年目である。そう簡単に結果を出せるものではない。自分なりに課題を見つけられただけでも収穫と言えるだろう。有村が語る。

「ルーキーイヤーの結果にはまったく満足できてないんですけど、『もうこれ以上はがんばれない』というくらい走り抜いてきました。そして、何も得られなかった日がないくらい、たくさんの経験をして知識を得ました。いろいろな経験をして、いかに多くのことを吸収できるかがいちばんの目標だったので、それは達成できたんです。アメリカの生活にも慣れたし、とにかく毎日、何かを得てきた1年だった」

 思うような結果を残せなかったかもしれないが、今後につながるものは確実に手にしてきた。有村が言う、アメリカの生活に慣れたのも大きいだろう。

 生活の拠点となったのは、フロリダ州オーランドの小さなアパートメントだった。オーランドという町には、日本の宮里美香をはじめ、多くの女子プロゴルファーが暮らしている。有村と仲のいいチェ・ナヨンら、韓国勢も多い。ツアーに慣れた頃には、オフウィークにそうした選手やキャディーが集まって、バーベキューを楽しんだりしていたという。

 さらに、高校の先輩でもある宮里藍ら、日本勢で「女子会」を開くこともあった。人気選手ばかりで日本のツアー中にはなかなか実現できない会で英気を養い、少なからずストレスも発散できていたようだ。

 また、ゴルフの合間を縫って、有村にとって"難題"だった英会話のレッスンにも取り組んだ。おかげで、今では頻繁に外出するようになった。

「どこへでも自分で行きます。買い物もひとりで行くし。すごく楽しい」

 生活基盤がしっかりすれば、ゴルフにも好影響をもたらすだろう。迎える2年目、1年目に積んだ経験を生かして"結果"を出すときがきた。

 オフの間はしっかりと休養をとった有村は、フロリダ州オーランドに戻ってくると、自身の"開幕"に備えて万全の準備を整えてきた。

「私のゴルフは、とにかくアグレッシブに、どんなピンのときでもしっかり攻めていくこと」

 真摯にゴルフと向き合っている有村。迷うことなく、自分のスタイルを貫くことができれば、自ずと結果はついてくるはずだ。

武川玲子●文 text by Takekawa Reiko