[其ノ四 注目商品 脱デフレ商品対決編 物価連動国債ファンド VS. 個人向け国債「変動10」]インフレに備えるなら物価連動国債ファンド
アベノミクスで長いデフレのトンネルから抜け出したい日本経済。だが、物価上昇は資産の目減りに直結する。今回は国債運用2商品の対決だ。

物価連動国債は物価が上がると元金と利子が増える

アベノミクスによって、物価が上昇基調です。昨年4月には日本銀行の新しい総裁が2年で物価上昇率を2%にするという目標を掲げ、現実に消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比は、6月から11月まで6カ月連続で上昇しました。現時点では、1年前より1%弱の水準で物価が上昇しています。

そこで最近は、「将来インフレになる」と予想する人たちが増えています。しかし、インフレになるとお金の価値が下がり、自分の資産を物価上昇率以上の利回りで増やしていかないと、自分のお金の価値が維持できません。

そのようなインフレ予想や個人向け国債の大量償還、NISA(少額投資非課税制度)キャンペーンなどを背景に、「個人向け国債」や「物価連動国債ファンド」が人気です。確かにリスクをあまり取らない安定運用をしながら、インフレに負けない程度にお金を増やしたい人には、これらの商品は向いています。

では、国債に投資する2つの商品のどちらを選ぶのが有利なのでしょうか。

まず、認知度の高い個人向け国債には3種類ありますが、インフレ対応力があるのは変動金利型で10年満期の「変動10」です。

市場金利によって適用金利が半年ごとに見直されるタイプの国債で、「インフレ→市場金利上昇→適用金利上昇」となります。また、従来は四半期に1度の割合で発行されてきましたが、今年から毎月発行です。

「物価連動国債」は、財務省が昨年10月に5年2カ月ぶりに発行を再開しました。物価動向に連動して元金と利子が増減する国債です(金利は固定だが、物価が上昇・下落すると元金が増減するので、利子も増減する)。

「消費者物価指数を基準として、物価が上がれば元金と利子が増え、物価が下がれば減る仕組みです。たとえば、元金1万円で購入して金利が2%の場合、1年後には1万200円に。その間物価が10%上昇したら元金は1万1000円、金利は2%なので、1年後は1万1220円になります」と解説してくれたのはFPの中村宏さんです。

物価連動国債の満期は10年で、2004年から発行を開始。現在は機関投資家しか買うことができないので、個人投資家は物価連動国債を投資対象とした投資信託を購入することになります。みずほ投信投資顧問や東京海上アセットマネジメント投信などが運用する物価連動国債ファンドが銀行や証券会社で販売されています。

なお、財務省は16年にも物価連動国債の個人保有を認める方針となっており、私たちも直接購入が可能になりそうです。

●「物価連動国債ファンド」と「個人向け国債『変動10』」の比較

【物価連動国債ファンド】
・商品概要
主な投資対象は物価連動国債。将来のインフレリスクをヘッジし、資産価値の保全を目指す投資信託

・満期
無期限

・購入単位
1万円以上1円単位

・コスト
購入時手数料:1%(上限、税抜き)
信託報酬:年0.6%以内(税抜き)
信託財産留保額:0.1%

・リターン
運用実績(年率、税引き前)
過去6カ月:4.5%
過去1年:3.3%
過去3年:3.81%
過去5年:4.25%

【個人向け国債<変動10>】
・商品概要
実勢の金利水準をもとに金利が半年ごとに見直されるが、最低利率0.05%は下回らない国債。今年から毎月発行される

・満期
10年

・購入単位
1万円以上1万円単位

・コスト
据え置き期間は1年で、中途解約時には過去2回分の手取り利息相当額が差し引かれる

・リターン
適用利率(年率、税引き前):0.43%

※物価連動国債ファンドはみずほ投信投資顧問の「MHAM物価連動国債ファンド」の場合で、運用実績は2014年1月3日現在。個人向け国債「変動10」は第45回、2014年1月15日発行分。

コストはかかるがリターンが魅力の物価連動国債ファンド

個人向け国債「変動10」は、購入時・保有時のコストがかからず、満期まで保有すれば、国が破綻しない限り安全性が高い商品です。保有している間も、市場金利の動きを反映して、半年ごとに適用金利が見直されます。今後の「インフレ→金利上昇」を予想し、安全確実に運用したいなら、うってつけといえます。

一方、物価連動国債ファンドは、コストがかかり、元本保証がなく、値動きがありますが、魅力的なのはこれまでのリターンの高さ。過去5年で年率3〜5%程度のリターンを確保しています。「気になるのはリスクですが、主な投資対象が物価連動国債なので、株式や外債ファンドよりは断然リスクが低い商品です。損失の可能性は最悪でも6%程度でしょう。インフレを予想しながら比較的安全な運用をしたい場合には、物価連動国債ファンドがいいでしょう」(中村さん)

今回の対決は、リスクとリターンを総合して物価連動国債ファンドに軍配!

【今月の対決立会人】
中村 宏(HIROSHI NAKAMURA)
ファイナンシャル・プランナー

大学卒業後、ベネッセコーポレーション入社。2003年、FPオフィスワーク・ワークスを設立し、個人相談、セミナー講師、執筆などで活躍中。



この記事は「WEBネットマネー2014年3月号」に掲載されたものです。