(Photo by Stephen DunnGetty Images)

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 「郷に入っては郷に従え」という言葉がある一方で、「周囲に流されるな」「マイペース」という言葉もある。今季、米ツアー選手として本格参戦を開始した松山英樹は、果たして、どちらの教えに従うべきなのか――そんなことを考えながらノーザントラスト・オープンで戦う松山を眺めていた。
松山、伸ばせず23位タイも「予選通過を続けていくのが大事」
 松山がこれまで培ってきたものすべてが彼の財産。その財産のおかげで現在の松山がある。昨年4月にプロ転向してから1年も経たないうちに米ツアー選手になったスピーディな歩みは、これまでやってきたいろいろなものごとが、うまく作用し、好結果を生んだ証だ。
 それを松山の流儀と呼ぶとしたら、彼はその流儀を維持するべきなのか、それとも米ツアーや米国ならではの環境、事情に合わせて、彼の流儀を柔軟に変えていくべきなのか。この答えを出すのは、なかなか難しい。
 そもそも、何かを変えるとなると、そこには必ずリスクが伴う。たとえば、今大会の初日、松山は新しいドライバーを握ったのだが、「ドライバーを変えた影響で自分のスイングなのか何なのか、よくわからないままプレーして……」という乱れを生み、翌日から従来のドライバーに戻したところ「今日(最終日)は安定した」。
 慣れたものには、それでうまくやってきたという実績があり、自信もある。だから最低限の安全は確保しやすい。けれど、大きな飛躍も生まれにくい。
 こんなこともあった。今大会の3日目、松山は2つスコアを伸ばしたが、順位はむしろ1つ下がった。初日からパットに苦しみ、この3日目もバーディチャンスを何度も逃した末の2アンダーのラウンドだった。「今日はムービングデーのならではの、スコアが動きやすいセッティングだったと思いますが、その中での2アンダーは、アンダーで回れたことに満足するのか、それとも、もっと伸ばせたのにという不満が残るのか。どっち?」という質問をしてみた。
松山の返答は、なかなか意外なものだった。
「みんなはムービングデーって言うけど、自分にとっては初日も2日目も3日目も一緒だと思う。最終日だけは優勝争いをするところ(日)だと思っている」
 なるほどね。3日目を特別意識することなく3日間を同列に考え、最終日だけは別格に据える。最終日の終盤で優勝のチャンスがあれば勝負に出る。それが、現在の松山流の考え方で、彼はそうやって実際に勝ってきた。
 一方、米ツアー選手の多くはムービングデーと呼ばれる3日目を強く意識する。予選2日間を終えたら、3日目にどこまでどれほどムーブアップすれば最終日に優勝争いができるか、勝利をつかめるかと考える。つまり、3日目は「予選2日間」と「最終日」をつなげる橋のようなもので、その橋を跳躍台にすることができるか、それとも滑り台にしてしまうか。それが「3日目なりの勝負」と考える。
 どっちがいいかは、わからない。いいとか、悪いとか、そういう尺度や判断は当てはまらないのかもしれない。が、選手一人一人に個性や流儀があるように、4日間の1日1日にもそれぞれの存在意義があるとは思う。3日目の存在意義を突き詰めていくと、その意義に合わせた3日目のゴルフというものの存在も見えてくるのではないか。そう思える。
 変えるべきか、変えないべきか。その問いは、おそらくどこかでパットに対する問いへ変わっていくだろうと思う。パットを最大の武器として日本で勝利を挙げてきた選手が、米ツアーに来てからは、むしろパットに最大の悩みを抱くという現象は、過去にも多く見られた。丸山茂樹、田中秀道、宮里藍。みんなパットに悩み、「何が悪いんだろう?」「何を変えたらいいんだろう?」と、首を傾げ、変えては悩み、苦しんだ。
 日本人選手が米ツアーに挑むとき、外国人選手が海外試合に挑むとき、一番難しいのは、何を変え、何を維持するか、その塩梅だ。
 そう言えば、今大会の初日、なぜパットに苦しんだのかを語ろうとしていた松山が、ストロークのせいだったのか、ラインの読みのせいだったのかと考えた揚句、冗談混じりで「難しいグリーンなので、放っておけばいいです」と言い放った。
 が、これは冗談だけで済ませるには少々もったいない言葉かもしれない。深く考えすぎないこと、悩みすぎないことも、ときには大切。いい意味で開き直ることを度胸と呼ぶとしたら、松山には度胸で米ツアーの難解なグリーンを乗り越えていってほしい。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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