黒木華がベルリン最優秀女優賞、寺島しのぶ以来日本人4年ぶりの快挙。

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ドイツ・ベルリンで開催中の第64回ベルリン国際映画祭で、コンペティション部門に出品された山田洋次監督(82歳)の新作「小さいおうち」に出演する女優・黒木華(23歳)が、最優秀女優賞にあたる銀熊賞(Silver Bear for Best Actress)を獲得した。同映画祭における日本人の銀熊賞獲得は、2010年の寺島しのぶ以来4年ぶりで、通算4人目(ほかに1963年左幸子、1975年田中絹代)。日本人女優としては最年少の受賞だ。

授賞式で黒木は「グーテン・アーベント。こんばんは。まさかこの場に立てるとは思っていなかったのでドイツ語をもう少し勉強していればよかったと後悔しております。この場に立てるのは、本当にこんなに素晴らしい映画を作ってくださった山田監督のおかげです。とても感謝しています。皆さんにこの映画を気に入ってもらえたと思うとすごく嬉しいです。映画に関わった皆さんに伝えようと思います。本当にありがとうございました。フィーレン・ダンク」とのスピーチで喜びを語った。

また、今回の黒木の受賞について、現地審査員は「『小さいおうち』には、いろいろなタイプの女性が出ていましたが、タキは、その全ての女性をつなぐキーパーソンとして大事な役どころでした。今回、女性陣が活躍している作品がコンペティション部門の中に多数ありましたが、黒木さんの演技力が群を抜いていました。一方、山田洋次監督に、賞をあげたいと思っていましたが、他の作品への賞もあり、賞が足りなかったくらいになってしまいました。その中で、女性を素敵に描いている作品として、黒木さんに女優賞を差し上げましたが、それは山田洋次監督を含め、作品を代表してあげたものです」と総評した。

山田監督の作品は同映画祭において、「たそがれ清兵衛」以降、8作連続の出品。また、コンペティション部門へは「母べえ」以来、6年ぶり、5作目の出品だった。昨年は「東京家族」がベルリナーレ・スペシャル部門に出品され、2010年には特別功労賞にあたるベルリナーレ・カメラを受賞している。

黒木は1990年生まれ、大阪府出身。NODA・MAPや阿佐ヶ谷スパイダースなど、人気の舞台で活躍し、昨年は映画「シャニダールの花」や「舟を編む」で主演を務め、日本アカデミー賞 新人俳優賞やブルーリボン賞 新人賞など、各賞の新人賞を総なめにした。また、連続ドラマ「リーガルハイ」(フジテレビ系)にも出演。ヒッピー風の弁護士・本田ジェーン役を好演した。

◎受賞記者会見の抜粋

Q.銀熊賞の受賞、おめでとうございます。黒木さんがこちらに来られた時、着物をお召しになられたら、「駆けることができず、ぱたぱたとしか歩けない」とおっしゃっていたのですが、受賞されていかがですか?

A.黒木「すごく嬉しいです。着物だとうまく動けないのですが、飛び上がりそうになりました」

Q.昨年末から今年の初めにかけて、日本で新人賞を次々と獲られ、それから、この数か月で一気に三大映画祭のトップになられましたね。今回、このような素晴らしい賞を獲られて、この先、どのような女優さんを目指して、また、どのような作品に出演したいなど、イメージをお持ちでしょうか。

A.黒木「私がトップに立ったのではなく、作品が評価されて、この賞を受賞できたと思っています。私は地道に頑張らなきゃなと思います。本当に、ここに来れたのも監督のおかげですし、タキちゃんという役をやらせていただいたのも、本当にラッキーだったなと思っていますので、みんなで喜んで、私は、これから、自分にできることを頑張っていきたいなと思います」

Q.とても有名な山田洋次監督とのお仕事はいかがでしたか?

A.黒木「すごく刺激的な現場でした。監督は、ずっとチャレンジし続けていて、若々しくて、素敵な方です。そんな監督を見ていると私ももっとついていかなきゃ、という気持ちで毎日楽しかったです」

Q.映画で演じられていたタキちゃんは非常に素晴らしいキャラクターでした。ご自身と重なるところはありましたか?

A.黒木「そうですね、私もタキちゃんのように静かにそこにいる人だと思うので、そこは似ているかなと思います。でも、あんなに女性的にいられるかなと思うと、ちょっといられないかなとも思いますね。素晴らしい日本の女性ですよね」

◎最優秀女優賞(銀熊賞)を獲得した日本人

1964年 第14回 今村昌平監督「にっぽん昆虫記」・羽仁進監督「彼女と彼」で左幸子
1975年 第25回 熊井啓監督「サンダカン八番娼館 望郷」で田中絹代、
2010年 第60回 若松孝二監督「キャタピラー」で寺島しのぶ

◎「小さいおうち」とは

山田洋次監督の82作目となる最新作。2010年に直木賞を受賞したベストセラー、中島京子さん原作の同名小説を映画化した作品で、昭和初期、東京郊外に佇む赤い屋根の家に奉公した女中タキが見た、ある“恋愛事件”が描かれる。

タキが封印した“秘密”が、60年の時を経て紐解かれていく本作。50年以上にわたって、“家族の絆”を描いてきた山田洋次監督が、本作では初めて“家族の秘密”に迫る。家族の温かさを見つめ続けたその目で、更に深く、人間の心の奥底に分け入り、その隠された裏側までも描きだした、切なくもミステリアスな物語だ。

◎「小さいおうち」ストーリー

昭和11年。田舎から出てきたタキ(黒木華)は、東京郊外に建つ少しモダンな、赤い三角屋根の家で、女中として働きはじめる。そこには、優しい奥様・時子(松たか子)と旦那様・雅樹(片岡孝太郎)、可愛いお坊ちゃんが穏やかに暮らしていた。しかし、一人の青年(吉岡秀隆)が現れ、時子の心があやしく傾いていく。ひそやかな恋愛事件の気配が高まる中、時子を慕い、家族を見守るタキは、一つの選択を迫られることになる。

それから、60年後の現代。晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートに綴った自叙伝には、“小さいおうち”で過ごした日々の記憶が記されていた。数年後、この世を去った彼女の遺されたノートを読んだ親類の健史(妻夫木聡)は、遺品の中から、一通の宛名のない手紙を見つけ、長く封印され続けた、ある“秘密”の真相へとたどり着いていく。