マラケシュからアトラス山脈を上って、標高2000メートルの峠へ    (Photo:©Alt Invest Com)

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 モロッコのマラケシュからサハラ砂漠を経て迷宮都市フェズに向かう2泊3日のツアーの話を前回書いた。ドライバー兼観光ガイドのヨセフはベルベル人の若者で、車をオフィスにヴァーチャルな旅行会社を経営していた。

 ベルベル人はギリシア・ローマ時代の「バルバロイ(野蛮人)」を語源に持つ由緒正しい北アフリカの原住民だ。北アフリカの地中海沿岸は8世紀にイスラム(ウマイヤ朝)に征服されて以来、フランス植民地時代を除けばずっとアラブ人の支配が続いている。独自の言語を持つベルベル人はモロッコでは多数派だが、社会的立場は“被支配”の側にある。

[参考記事]

●空前の観光ブーム・モロッコで5カ国語を操るベルベル人ガイドが生き残るための才覚

 モロッコの砂漠ツアーは、1日の大半を車での移動にあてることになる。掻き入れ時の年末年始を前に、“社長”であるヨセフはホテルや車の手配に忙殺されていて、私との会話はしばしば携帯電話で遮られた。

 だが、ヨセフが携帯でひたすら話し続けるのにはもうひとつ別の理由がある。

携帯電話で頻繁にやり取りされる重要な情報

 世界的な観光地のマラケシュとフェズは鉄道で8時間ほどの距離だが、サハラ砂漠を訪れるとなるとアトラス山脈の峠(標高2000メートル)を越えなければならない。アトラスの南麓(サハラ砂漠の北の端)を走るのがカスバ街道で、直線距離で300キロあまりある。

「マラケシュ−サハラ砂漠−フェズ」はふつうに走れば3泊4日に行程だが、砂漠で1泊するとあとは同じような景色が続くだけなので、先を急ぎたい旅行者はもうすこし効率的に移動できないかと考える。こうした需要にこたえてヨセフのような中小の旅行会社は、ドライバーと観光ガイドをいっしょにして費用を抑え、同じ行程を2泊3日で回るツアーを提供しているのだ。

 これはなかなかいいアイデアだが、問題がひとつある。制限速度を守っていては、どうやっても2泊3日は無理なのだ(だから大手旅行会社のツアーは3泊4日になる)。ヨセフたちの仕事は、スピード違反を前提に成り立っている。

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