(C) 2014「小さいおうち」製作委員会
第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門への出品が決定。

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現在公開中の映画、『小さいおうち』が特に女性の深い共感を呼び、高い評価を得ている。本作は、名匠・山田洋次の82作目となる監督作で、第143回直木賞を受賞した中島京子の小説を映画化。山田洋次監督といえば、『男はつらいよ』シリーズで有名なだけに、若い女性の中には、本作も男性や年配の方向けなのでは?といったイメージを持つ方もいるかもしれない。しかし、本作には20代、30代の女性からも多くの感動の声が寄せられている。山田監督自身も「こんな色っぽい作品を撮ったことないよ」と語るほど、これまでの作品とは少し違い、女性の思いや恋を繊細に描いた人間ドラマになっている。

■ストーリー
昭和11年、東北地方から出てきた純朴な少女・布宮タキ(黒木華)は、東京郊外に建つモダンな赤い屋根の小さな家で女中として働き始めた。最初は、家の主人でおもちゃ会社に勤める平井雅樹(片岡孝太郎)、その妻・時子(松たか子)、2人の5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を送っていた。

そんなある日、雅樹の部下、板倉正治(吉岡秀隆)という青年が現れ、しだいに時子の心が板倉へと傾いていく。そして、そんな時子の変化をタキは敏感に感じ取っていた。それから60数年後、タキの親類・大学生の荒井健史(妻夫木聡)は、晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートにつづった自叙伝を読み、これまで秘められていた真実を知ることに……。

■時子とタキの行く末を見守って……
本作は昭和初期の時代に、中流階級の家で起こった出来事を、女中のタキの目線から描いた物語。決して、ドラマティックな展開や激しいバトルシーンはないものの、見る人のイマジネーションを大いに刺激し、鑑賞後の余韻がずっと残ると評判だ。特に、田舎から東京に出てきたタキが、都会の街並みや女性たちの洗練されたファッションをまぶしく感じ、おしゃれで美しい時子に密かに憧れながらけなげに働く姿に、女性からの共感を得ている。さらに、既婚の女性からは、「仕事が第一、ときに妻の気持ちを考えない夫への気持ちが離れてしまう時子の気持ちもよくわかる」という声も。そんなタキと時子の行く末を見守りながら、次第にタキが晩年抱えていた“秘密”が明らかになっていくストーリー展開に目が離せない。

■松たか子、黒木華他、豪華な顔ぶれ
時子役には、『告白』『夢売るふたり』など、作品ごとにその実力で圧倒的な存在感を放つ松たか子。本作では銘仙の着物を着こなし、艶っぽい大人の女性として難役に挑戦している。一方、タキ役は松たか子に憧れてこの世界に入ったという黒木華。これまで映画『シャニダールの花』で主演した他、野田秀樹、蜷川幸雄の舞台にも立つ若手実力派で、本作で“山田組”に初参戦。各界からその演技に称賛の声があがっている。ほかにも、60数年後のタキを、倍賞千恵子が演じ、短い出演時間にもかかわらず観客の涙を誘う。

また、板倉正治役には吉岡秀隆。前作『東京家族』の出演陣が、さまざまな役柄で登場し、山田監督ファンには思わずにんまりしてしまう楽しさも用意されている。

■小さなおうちの、小さな、こだわり
また、シーンの一つ一つに“山田組”のこだわりがみられる。小さなおうちで使われている調度品や、飾られている花、壁の色などは、当時のセンスや雰囲気をよみがえらせようと、すべて考えに考えぬかれている。昭和の古き良き時代を知らなくても「何だかいいなぁ」と思わせてくれる、洗練されながらもホッコリとした温かみに、どこか懐かしささえ感じられる。時子の着こなすモダンな着物や髪型、周りの人々のファッションにもぜひ注目を。昭和デザインの美を感じることができる。

■さいごに
本作には、行動とは裏腹な女心に秘められた愛や憧れ、嫉妬、哀しみ、切なさ、さまざまな思い、そして“秘密”が昭和の時代を生きる女性を通して描かれている。

そんな彼女たちの思いは今を生きる女性にも多くの共感を与え、公式サイトでは黒柳徹子さんや森本千絵さん、池田理代子さんら多くの女性も感動のコメントを寄せている。映画を見た女性の中には、「見たことを夫に内緒にしたいと思った」という方も。人によっては自分だけが知る“秘密”と一緒に大事に胸にしまっておきたくなる作品なのかもしれない。

山田監督が「昭和から現代までを舞台に、その時代を生きた人々の気持ちのありかたや、人間関係の一つ一つの関わりかたを描き出したい」と挑んだ本作。これからを生きる私たちに、さまざまな気づきと未来を考えるきっかけを与えてくれている。(mic)

『小さいおうち』は現在公開中。