企業のクレーム処理の現場では、「安易に謝罪すべきでない」と考える人も少なくない。謝ると落ち度を認めたことになる、というのがその言い分だが、実際にトラブルが起きた際、詫びの一言がなかっただけで、さらに大きなトラブルに発展するケースもある。ではクレーマーは、何をどう考えてクレームしているのか、新刊『理不尽な人に克つ方法』(小学館新書)を上梓したばかりの元刑事でクレーム対応のプロである援川聡(えんかわ・さとる)氏が解説する。

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 クレーム常習者に話を聞いたことがあるのですが、彼はこんな面白い言い方をしていました。

「料理に異物が混入していたので指摘すると、『あっ』と言うだけでお詫びのひと言もない飲食店は結構多いんですよ。こっちは気をつかって小さな声で言ったのに、あっちは無神経。『申し訳ありません』と丁寧に対応してくれたら、そこで終わる話なのに、そうならないんですよ。

 調理にせよ、配膳にせよ、人間のやることなのでミスはしかたがないと思ってるんです。その代わり、そのあとの対応がお粗末だとこっちもね。そうなったらガンガンいきます。でも、こっちが怒鳴ったとたん、向こうは急に丁寧な対応をしてくる。それも余計に腹が立つんですよ」

 本人も言っているとおり、こうした類いのクレームは、「申し訳ありません。すぐに商品をお取り替えいたします」とスピーディに対応すれば、たいてい収束に向かうんです。クレーマー=ホワイト・モンスターの多くは、はじめから悪意があるわけではなく、一時の興奮で怒りを暴発させてしまっているだけなのですから。

 私たちの周囲にあるトラブルの大半は、「謝って済む問題」です。だったら、謝って済ませてしまえばいいのです。

※援川聡・著/『理不尽な人に克つ方法』(小学館新書)より