アベノミクスは本当に効果を発揮したのか。日本だけが給油しながらアクセルを踏み続けるような状態を続けているので、今年は日本経済にとってかなりつらい年になると大前研一氏は分析している。

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 2014年に入り、日本経済の「潮目」が変わった。私は年初からその空気の変化を感じて発言してきたが、結論から先に言えば、今年はかなり“つらい年”になると思う。

 新聞・テレビなどは株価が大幅に下落した1月半ば頃からようやくその変化を報じ始めたが、予兆はすでに昨年末に現われていた。これほど円安になっているにもかかわらず、輸出数量が増えていないのである。その理由を克明に調べていくと、アベノミクスは本当に景気上昇・経済再生の効果があったのかどうか、甚(はなは)だ疑わしくなってくるのだ。

 安倍政権は景気を上向かせるために、いわば車にガソリンを注ぎ続けながらアクセル全開でブレーキを踏まずに突っ走ってきた。その象徴が、一般会計の総額で過去最大の95兆8800億円に膨れ上がった2014年度予算案だ。さらに、もし4月からの消費税引き上げで景気の腰折れ懸念が広がれば、補正予算を組むのは時間の問題である。

 振り返れば、EUではギリシャの財政問題に端を発した欧州債務危機の時に、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が「必要があれば、どこの国の国債でも無制限に買う」と言ったから、危機が遠のいて小康状態が続いている。ところが、ECBがどれくらい国債を買ったのか調べてみたら、なんと「ゼロ」だった。

 黒田総裁と異なり、ドラギ総裁は“口先”だけで、実際には全く買っていなかったのである。国債を買っていないEUと買いまくっている日本。それが現在のユーロ高の最大の理由である。

 要するに、EUはガソリンを入れてアクセルを踏むことはしなかったのだ。アメリカも少なくともアクセルを踏むのはやめて、ブレーキを踏むかもしれないという状況になっている。そんな中で、日本だけが給油しながらアクセルを踏み続けている。このままでは、さらなる円安とともに、コントロール不能のインフレに陥る危険性が高まる一方だ。

 賢い企業や個人は、すでに昨年までの円高局面で資産を海外に移している。それが今年はさらに加速するだろう。円安が進んだ今では、もはや遅きに失した感もあるが、とにかくインフレ危機への備えを急ぐに越したことはないのである。

※週刊ポスト2014年2月14日号